多重項(読み)タジュウコウ(その他表記)multiplet term

化学辞典 第2版 「多重項」の解説

多重項
タジュウコウ
multiplet term

量子力学系のエネルギー準位が,ある近似段階では何重かに縮退しているとみなされるが,実際にはその系に存在する摂動によりいくつかの接近した準位に分裂している場合に,それらの分裂成分は多重項を形成しているという.またそれに対応して,スペクトルに何本かの接近したスペクトル線が現れる場合,それを一組にして多重線とよぶ.代表的な例は,ラッセル-ソーンダーズ結合で記述される原子スペクトル項2S+1L(Lは全軌道角運動量Sは全スピン角運動量の各量子数)が,スピン-軌道相互作用により内量子数Jの異なる準位に分裂する場合である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多重項」の意味・わかりやすい解説

多重項
たじゅうこう
multiplet term

量子力学系のエネルギー準位で,縮退によって同一エネルギーをもつが,摂動によってわずかにエネルギーに差のあるものをまとめていう。普通は原子や分子の状態に対する多重項を意味し,同じ方位量子数 Lおよびスピン量子数 Sをもつエネルギー準位の組をいう。多重項を形成するエネルギー準位の数は,LSなら2S+1個になり,LSの場合はこれより少い。 S=0,1/2,1,…に対してこの数は1,2,3,…となり,それぞれ一重項,二重項,三重項,…重項という。一般に2S+1を多重度という。原子核素粒子の場合,スピンの代りにアイソスピンを用い,荷電多重項を考える。アイソスピン Iの多重項では,多重度は2I+1である。

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