日本大百科全書(ニッポニカ) 「伸張デュープレックス」の意味・わかりやすい解説
伸張デュープレックス
しんちょうでゅーぷれっくす
extensional duplex
上下を正断層に挟まれた地層が、より小規模ないくつかの正断層で次々と切られて存在する地質構造。デュープレックスの一種で、正断層に伴う。衝上断層帯に見られる衝上デュープレックスの正断層版ともいえるもので、上位の正断層はルーフroof(屋根)断層、下位の正断層はフロアーfloor(床)断層とよばれる。より小規模な正断層は、ルーフ断層・フロアー断層に漸近して合流する。より小規模な正断層によって取り囲まれた個々のブロックはホースhorseとよばれる。
日本では、徳島県の白亜系和泉(いずみ)層群の砂岩泥岩互層中に露頭スケールの小規模な伸張デュープレックスが報告された。伸張デュープレックスは、正断層がフラットflat(地層に平行な部分)-ランプramp(地層を斜めに切り下げる部分)-フラットの階段状の形態をしているところで、ランプの下盤(したばん)側にできた新しい正断層が既存の正断層に合流することを繰り返すことによって形成されると考えられている。
[村田明広]