地質構造(読み)ちしつこうぞう(英語表記)geological structure

精選版 日本国語大辞典 「地質構造」の意味・読み・例文・類語

ちしつ‐こうぞう ‥コウザウ【地質構造】

〘名〙 地殻を構成する岩石または地層の構造および相互の関係。広義では岩石や地層がおかれている状態をいい、狭義では褶曲・断層などのように地殻変動によって岩石や地層が変形された状態をいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地質構造」の意味・わかりやすい解説

地質構造
ちしつこうぞう
geological structure

地球上に形成された,または地殻変動などによって生じたさまざまな岩石や地層の形態あるいは構造をいう。構造としては岩石の節理の入り方,鉱物の選択配列,一枚の地層の構造が次第にある方向に厚くなっていくという状態から,一つの火山の成層構造,火山の火口やカルデラの構造,大きいものとしては日本海溝や太平洋底の構造,あるいは大西洋の両側のアフリカ・南アメリカ両大陸の地質構造の共通性というように,海洋底や大陸の地質構造にいたるまでスケールの大きさには種々の段階がある。
地層は崖などで見ると,通常,薄い板状のものが傾いて何層も重なっていることが多い。その一枚の板状のものが一つの地層で最小の基本単位でもある。一枚の地層は海成層であれば本来海底にほぼ水平に広がって堆積したもので,よく見ると粒度が下位から上位へ粗粒から次第に細粒になっている。これらは,たとえば土砂が陸地から海底に運ばれると最初に粗粒のものが,そして次第に細粒のものがその上に重なることを表わしている。そのようなことが長い年月にわたり周期的に繰返されて,古い地層の上に新しい地層が順に重なり,何層もの地層が厚く堆積することになる。やがて,地殻変動などで海底が隆起すると地層は地表へ露出し,表層部から浸食を受けて削られる。再び海底に沈降するとその上にまた新しい地層が堆積して重なり,前者との間には時間間隙を表わす不規則な境界面ができる。これを不整合面と呼ぶ。
現在陸上に見られる地層はこのような過程を何回も経て形成されたものである。海底が水平のまま隆起したり沈降するならば,不整合が間にはさまれているとしても,どこまでも地層は水平に重なった構造を示すはずである。しかし実際には途中で横からの力を受けてたわむように曲げられ,褶曲する。地層は年代を経ると堅くなり,岩石と呼んでもよい状態になるが,それでも長い年月をかけてゆっくり押されると褶曲構造を示すようになる。たとえば,アルプス山地の断面を切ってみると,複雑な褶曲構造が現れてくるはずである。急激に力が加わったり,褶曲が限界を過ぎて続くと,力が集中した部分からずれて横ずれ断層や衝上断層ができる。一方,両側から引張られるような力が働くと,地層はある部分からずれて,片側が落下する正断層ができる。1回のずれは大きくないとしても,ほとんどの場合は何回も同じ方向のずれが重なって次第に大きくずれることになる。
火口から噴出した火山灰や溶岩などは山の斜面に堆積するので本来傾斜しているが,地表に広がるとほぼ水底の地層と同じようなものとなる。富士山のような成層火山の地質構造は火山灰や溶岩の層が円錐状に何層も重なっている。一方,花崗岩のような深成岩になると地層とは異なった塊状の堅硬な岩体で,マグマの活動で地下深所に広い範囲で貫入 (かんにゅう) する。火成岩には地層の割れ目裂け目あるいは地層の間の隙間に沿って入り込む貫入岩体や迸入 (へいにゅう) 岩体の構造を示すこともある。これらは地殻変動によって変形もするが,断層で複雑に切られる場合が多い。
地層や岩石が地殻変動を受けると変位・変形し,さらに折れ曲って褶曲したり,ずれて断層を生じたりする。それも簡単な折れ曲りの撓曲 (とうきょく) から全体がふくらみ上がったドーム構造,全体がゆるくくぼんだ盆地構造,さらに大規模な押しかぶせ褶曲や褶曲山脈の構造まで,あるいは数 cm程度のずれの小断層から,延長 100km以上に及ぶ大規模な断層まで種々の規模と段階がある。断層のずれの方向も両側の地層が引裂かれてできやすい正断層,両側の地層が互いに押し合い,下の地層が上の地層にのし上がる衝上断層,断層を境に両側の地層が横方向にずれる横ずれ断層や斜めずれ断層など,地層や地殻に加わる力の向きによって種々な型に分けることができる。
地層や岩石の形成時の様相を最初に明らかにし,それと地殻変動による変形後のものを詳しく調べ,両者の違いとそのプロセスを検討することによって,地殻変動を解明することができ,それによって現在みられる地質構造の成り立ちを明らかにすることができる。地殻変動は1回あるいは1時期に限って生じるものではない。何回も繰返して変位・変形を与える場合もあれば,地殻変動そのものが年代とともに次第に変化していく場合もある。また,褶曲に伴って断層が生じることや,大断層に伴っていくつもの共軛 (きょうやく) 断層がひきずられてできることもあるし,関連して火成活動火山活動を引起すこと,あるいは火成・火山活動 (→火成作用 ) によって断層が生じること,さらにそれらによって新しい地層の堆積場所である堆積盆地がつくられることなどもある。地質構造の成り立ちを追求することは,いわば地殻変動という面から地球の歴史を明らかにすることと同様である。

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改訂新版 世界大百科事典 「地質構造」の意味・わかりやすい解説

地質構造 (ちしつこうぞう)
geologic structure

地球上の岩石や地層がいったん形成されたあとで,移動,回転,変形,破壊などの作用により,もとの姿勢,配列,相対的な位置関係などが変化してできた内部形態の総称。規模の大小を問わず,人が直接観察できる露頭ほどのものから全地球規模の構造まで含まれるが,このうち,たとえば日本列島の構造を総括的に論ずるような場合には地体構造geotectonicsという語も用いられる。地質構造を形成した運動が造構造運動であり,できあがった構造の特徴によって,褶曲運動,断層運動,造山運動造陸運動,造盆地運動などと呼ばれる。

 地質構造は,層状をなす岩石,とくに堆積岩(地層)の中でよく観察される。堆積岩の大部分を占める水成岩はもともとはほぼ水平に堆積した(これを初生水平の法則という)ので,傾いた地層があればそれは造構造運動を受けた証拠である。したがって地層の走向・傾斜を測ることは,地質構造調査の第一歩である。岩石の変形の様式には,連続的なものと不連続的なものがある。前者の典型は地層が波形に変形した褶曲であるが,このほかに撓曲(とうきよく),ドーム,構造盆地などがある。後者の典型は断層であり,このほか節理へき開などもみられる。これらは地質構造を構成する要素的構造であり,その成因を考えることによって,地質構造を形成した機構や過程を明らかにする手がかりが得られる。要素的構造ではないが,傾斜不整合は上位の地層が堆積する以前に,地層の厚さの広域的変化は地層の堆積中に,それぞれ造構造運動があったことを示す証拠となる。

 地質構造は一般に地球内部に働く力が原因となって形成されたものをいう。そのため,地すべりなど重力の作用で地表部分だけが運動した結果できた現象(マス・ムーブメント)は,褶曲や断層を伴っていても地質構造とはいわない。しかし,重力の作用によるものであっても非常に大規模で,地下の深部までを巻き込んで運動した結果できた構造は地質構造である。
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