信用割当て(読み)しんようわりあて(その他表記)credit rationing

翻訳|credit rationing

改訂新版 世界大百科事典 「信用割当て」の意味・わかりやすい解説

信用割当て (しんようわりあて)
credit rationing

ある資金の市場において,借手はできるだけ低い金利利子率)で資金を調達しようとし,貸手は高い金利で資産を運用しようとする。金利が均衡水準より低いときは貸手の資金供給より借手の資金需要のほうが大きく,市場において金利は上昇する。逆の場合は金利が低下する。それゆえ金利が伸縮的であれば,均衡水準すなわち貸手の資金供給曲線と借手の資金需要曲線の交わる点で,資金の需給は一致することになる。しかし,なんらかの理由で金利が十分伸縮的でなく,資金需要が資金供給より大きくても利子率上昇が生じないとすると,その資金市場では超過需要(資金需要-資金供給)を残したままで均衡し,限られた量の資金(供給)が一部または全部の資金需要者に割り当てられることになる。これが信用割当てといわれる現象である。信用割当てのもとでは,効率の悪い企業(借手)が割当てを受け,効率のよい企業が資金配分を拒否される可能性があり,資金の効率的配分がそこなわれるおそれがある。金利の非伸縮性は,制度的な金利制限(最高金利規制)または市場にある種の不完全性がある場合に生じる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の信用割当ての言及

【銀行】より

…こうした特徴をもつ銀行貸出しが金融取引の大宗を占める結果,高度成長期の日本の金融市場では,その時その時の利子率によって資金の需要と供給が調整されるのではなく,非価格要因で資金需給が一致するという機構が確立した。いわゆる信用割当てのメカニズムである。独占禁止法の適用除外措置の第1号として成立した臨時金利調整法(1947公布)や銀行経営の健全性の維持をたてまえとする金融行政(行政指導を含む)が,銀行間の競争行為を制限したことも,信用割当てのメカニズムを強化した。…

※「信用割当て」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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