精選版 日本国語大辞典 「則んば」の意味・読み・例文・類語
とき‐ん‐ば【則ば】
- 〘 連語 〙 ( 「とき(時)には」の変化したもの。中古に漢文訓読で「則」の補読語として発生した ) 先行する事柄を受けて、その結果起こる事柄を述べるときに用いる。…すれば、すなわち。…する場合は。
- [初出の実例]「燈び滅し尽きぬるときんは、方所有ること无し」(出典:東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)四)
- 「君はづかしめらるときんば臣死すといへり」(出典:浄瑠璃・大職冠(1711頃)一)
則んばの語誌
( 1 )中世には、博士家では、「則」を不読の置字とし、直前に「ときんば」を補読するのに対して、仏家では、「則」を「すなはち」と訓じるという読み分けが見られる。
( 2 )仏家系の「すなはち」は、中世後半期を過渡として、博士家の訓方にも浸入し、「ときんばすなはち」という二重訓を生じさせるが、後に補読語「ときんば」は駆逐された。
( 3 )近世後期には、「則」の字の訓は、博士家・仏家とも同一の「すなはち」となり、「ときんば」は消滅した。