(読み)いばう

精選版 日本国語大辞典 「嘶」の意味・読み・例文・類語

いば・う いばふ【嘶】

[1] 〘自ハ下二〙 =いばえる(嘶)伊呂波字類抄鎌倉)〕
※虎明本狂言・牛馬(室町末‐近世初)「駒ほくふうにいばふれば」
[2] 〘自ハ四〙 =いばえる(嘶)
※天草本伊曾保(1593)ネテナボ帝王イソポに御不審の条々「Babilonia ノ コマノ ibǒuo(イバウヲ) キイテ」
[語誌](1)古辞書の例は活用がはっきりしないが、下二段「いばゆ」が古い形なので、それから転じたと見られる「いばう」も初めは下二段と推定した。
(2)「いばふ」とハ行に表記する形はハ行音の転呼による動詞活用行の混乱の結果、鎌倉時代になって生じたものである。
(3)中古では下二段活用(ヤ行)であったが、室町時代になって下二段活用(ヤ行・ハ行)の他に四段活用(ハ行)との両形が併用される。

いば・える【嘶】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 いば・ゆ 〘自ヤ下二〙 馬が鳴く。いななく。いばう。〔十巻本和名抄(934頃)〕
洒落本・蕩子筌枉解(1770)鞏路感懐「馬嘶白日暮 一日のりまはされ馬もひもじくなってむしゃうにいばへる」
[語誌]→「いばう(嘶)」の語誌

ころろ・く【嘶】

〘自カ四〙 (擬声語「ころろ」の動詞化) ころころ音をたてる。声がかれてのどが鳴る。
古事記(712)上「うじたかれ許呂呂岐(コロロキ)て」

いな‐な・く【嘶】

〘自カ五(四)〙 馬が声高く鳴く。いなく。いばえる。〔十巻本和名抄(934頃)〕
平家(13C前)九「この馬ぬしの別をしたひつつ、〈略〉二三度までこそいななきけれ」

いな‐なき【嘶】

〘名〙 (動詞「いななく(嘶)」の連用形名詞化) いななくこと。また、その声。〔羅葡日辞書(1595)〕

いば・ゆ【嘶】

〘自ヤ下二〙 ⇒いばえる(嘶)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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