化学辞典 第2版 「塩化チオニル電池」の解説
塩化チオニル電池
エンカチオニルデンチ
thionyl chloride lithium battery
塩化チオニルリチウム電池のこと.正極活物質に常温で液体である塩化チオニルSOCl2,負極活物質にリチウムLi,電解液にテトラクロロアルミン酸リチウムLi[AlCl4]溶液を用いた一次電池である.正極活物質とリチウムが接触すると,リチウム表面に安定でち密な塩化リチウム被膜が生成し,接触を遮断する.液体の塩化チオニルから集電するため,正極には多孔質の炭素電極が使用される.構成は以下のように表せる.
Li|SOCl2 + Li[AlCl4]|SOCl2,C
放電機構には多くの提案がされているが,放電生成物の分析や熱力学的考察から,
4Li + 2SOCl2 → 4LiCl + SO2 + S
と考えられている.この電池は,初期には軍需用途に限られていたが,外缶のステンレスのシール技術が発達して民生用に展開された.エネルギー密度が大きいことに加え,(1)電圧が3.6 V と高い,(2)放電電圧が安定している,(3)使用温度範囲が広い,(4)保存性にすぐれている,という特長がある.用途としては,ノートパソコンや,屋外施設機器のバックアップ電源や主電源がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報