外部回路に電流を取り出して電池内の活物質が消耗すると、ふたたび充電して繰り返し使用できない電池をいう。充電/放電の可逆性がある蓄電池が二次電池とよばれているのに対応して、使い切りの電池は一次電池といわれる。
一次電池には経済性に優れたものが多く、電解質が水溶液系のものとしてマンガン乾電池(単に乾電池と表示されたこともある)、空気湿電池、アルカリ一次電池があり、また非水溶液系としてリチウム一次電池がある。携帯電灯、時計、ポータブル機器や電子装置、電動玩具(がんぐ)などの電源として広く使用されている。
マンガン乾電池は高性能マンガン乾電池「P」(赤ラベル)と超高性能マンガン乾電池「PU」(黒ラベル)に等級区分されている。またアルカリ一次電池はアルカリマンガン電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池(空気電池)に分類され、アルカリマンガン電池はさらにアルカリ乾電池とアルカリボタン電池に細分されている。水銀電池はアルカリ一次電池に属するが、現在JIS規格にはなく、環境問題から生産が中止されていて、空気亜鉛電池が代替品となっている。リチウム一次電池には正極活物質に使用する材料により二酸化マンガンリチウム一次電池、フッ化黒鉛リチウム一次電池、塩化チオニルリチウム一次電池、二硫化鉄リチウム一次電池、酸化銅リチウム一次電池、そしてヨウ素をポリ(2‐ビニルピリジン)nI2のような錯体で用いるヨウ素リチウム一次電池などがある。
一次電池には円形(形状記号R)、平形(F)、非円形(P)、角形(S)、積層乾電池など種々の形状のものがある。手軽な電源として互換性を高め、利用者の便利性を向上するために種類、性能、寸法などにはJIS規格が規定されており、また国際規格との整合性が図られている。
なお、特殊な一次電池として標準電池がある。これは電子機器や実験装置の電圧の校正に用いられるもので、精度の高い起電力を示す。
[浅野 満]
『高村勉・佐藤祐一著『ユーザーのための電池読本』(1988・コロナ社)』▽『竹原善一郎著『電池――その化学と材料』(1988・大日本図書)』▽『池田宏之助編著、武島源二・梅尾良之著『「図解」電池のはなし』(1996・日本実業出版社)』▽『ダヴィッド・リンデン編、高村勉監訳『電池ハンドブック』(1996・朝倉書店)』▽『岡田和夫著『電池のサイエンス――くらしをささえる名脇役』(1997・森北出版)』▽『小久見善八編著『電気化学』(2000・オーム社)』▽『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』
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電池反応が完全には可逆ではないため,1回の放電のみ可能な使い捨て電池.一次電池としては,1800年にA. Volta(ボルタ)がはじめて実用可能な電池をつくり,1836年にダニエル電池,1863年にルクランシェ電池が発明された.当時は,これらの電池のおもな用途が蓄電池(二次電池)の充電にあったので,一次電池とよばれるようになった.代表的な一次電池の構成および起電力を表に示す.
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…熱電池には,ゼーベック効果を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電対形電池と真空中の熱陰極から熱電子が放出される現象を利用した熱電子形電池がある。 化学電池は一次電池,二次電池,燃料電池に大別されるが,化学エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みは同じである。すなわち,酸化剤を陽極活物質,還元剤を陰極活物質として,電解液の中に対置させ,両極を連結すると,陽極では電子受容反応(還元反応),陰極では電子放出反応(酸化反応)が起こり,外部負荷を通って電子は陰極より陽極に移動し,電流が陽極から陰極に流れる。…
※「一次電池」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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