一次電池(読み)イチジデンチ(その他表記)primary battery

デジタル大辞泉 「一次電池」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐でんち【一次電池】

乾電池など、一度放電してしまうと電池内の物質が変化してしまい、再び使用できない電池。→二次電池

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精選版 日本国語大辞典 「一次電池」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐でんち【一次電池】

  1. 〘 名詞 〙 一度放電してしまうと、充電して再び使用することのできない電池。ふつうの乾電池など。〔電気訳語集(1893)〈伊藤潔〉〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一次電池」の意味・わかりやすい解説

一次電池
いちじでんち
primary battery
primary cell

外部回路に電流を取り出して電池内の活物質が消耗すると、ふたたび充電して繰り返し使用できない電池をいう。充電/放電の可逆性がある蓄電池が二次電池とよばれているのに対応して、使い切りの電池は一次電池といわれる。

 一次電池には経済性に優れたものが多く、電解質が水溶液系のものとしてマンガン乾電池(単に乾電池と表示されたこともある)、空気湿電池、アルカリ一次電池があり、また非水溶液系としてリチウム一次電池がある。携帯電灯、時計、ポータブル機器や電子装置、電動玩具(がんぐ)などの電源として広く使用されている。

 マンガン乾電池は高性能マンガン乾電池「P」(赤ラベル)と超高性能マンガン乾電池「PU」(黒ラベル)に等級区分されている。またアルカリ一次電池はアルカリマンガン電池酸化銀電池空気亜鉛電池空気電池)に分類され、アルカリマンガン電池はさらにアルカリ乾電池とアルカリボタン電池に細分されている。水銀電池はアルカリ一次電池に属するが、現在JIS規格にはなく、環境問題から生産が中止されていて、空気亜鉛電池が代替品となっている。リチウム一次電池には正極活物質に使用する材料により二酸化マンガンリチウム一次電池、フッ化黒鉛リチウム一次電池、塩化チオニルリチウム一次電池、二硫化鉄リチウム一次電池、酸化銅リチウム一次電池、そしてヨウ素ポリ(2‐ビニルピリジン)nI2のような錯体で用いるヨウ素リチウム一次電池などがある。

 一次電池には円形(形状記号R)、平形(F)、非円形(P)、角形(S)、積層乾電池など種々の形状のものがある。手軽な電源として互換性を高め、利用者の便利性を向上するために種類、性能、寸法などにはJIS規格が規定されており、また国際規格との整合性が図られている。

 なお、特殊な一次電池として標準電池がある。これは電子機器や実験装置の電圧校正に用いられるもので、精度の高い起電力を示す。

[浅野 満]

『高村勉・佐藤祐一著『ユーザーのための電池読本』(1988・コロナ社)』『竹原善一郎著『電池――その化学と材料』(1988・大日本図書)』『池田宏之助編著、武島源二・梅尾良之著『「図解」電池のはなし』(1996・日本実業出版社)』『ダヴィッド・リンデン編、高村勉監訳『電池ハンドブック』(1996・朝倉書店)』『岡田和夫著『電池のサイエンス――くらしをささえる名脇役』(1997・森北出版)』『小久見善八編著『電気化学』(2000・オーム社)』『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』


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百科事典マイペディア 「一次電池」の意味・わかりやすい解説

一次電池【いちじでんち】

ダニエル電池ルクランシェ電池乾電池などのように,いったん電流を外部回路を通して取り出してしまうと充電がきかない電池。→蓄電池
→関連項目水銀電池電池ボルタ電池

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改訂新版 世界大百科事典 「一次電池」の意味・わかりやすい解説

一次電池 (いちじでんち)
primary cell(battery)

電池から電流を取り出すと活物質が消費され,活物質がなくなれば電池として働かなくなる。このようになったとき,充電によってもとの電池に戻すことができず,廃棄してしまう電池を一次電池という。実用されている一次電池には,マンガン乾電池アルカリマンガン乾電池水銀電池酸化銀電池空気電池リチウム電池などがある。
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化学辞典 第2版 「一次電池」の解説

一次電池
イチジデンチ
primary battery, primary cell

電池反応が完全には可逆ではないため,1回の放電のみ可能な使い捨て電池.一次電池としては,1800年にA. Volta(ボルタ)がはじめて実用可能な電池をつくり,1836年にダニエル電池,1863年にルクランシェ電池が発明された.当時は,これらの電池のおもな用途が蓄電池(二次電池)の充電にあったので,一次電池とよばれるようになった.代表的な一次電池の構成および起電力を表に示す.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一次電池」の意味・わかりやすい解説

一次電池
いちじでんち
primary battery

放電したのち,充電によってもとの状態に戻すことのできない電池。マンガン乾電池,銀電池,水銀電池などがある。

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カメラマン写真用語辞典 「一次電池」の解説

一次電池

 一回使用し終えたら使えなくなるものが一次電池。身近なところではアルカリ乾電池のほか、ニッケルマンガン、リチウムイオン等がある。これに対して 二次電池 は充電して再使用できるもののこと。

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世界大百科事典(旧版)内の一次電池の言及

【電池】より

…熱電池には,ゼーベック効果を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電対形電池と真空中の熱陰極から熱電子が放出される現象を利用した熱電子形電池がある。 化学電池は一次電池,二次電池,燃料電池に大別されるが,化学エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みは同じである。すなわち,酸化剤を陽極活物質,還元剤を陰極活物質として,電解液の中に対置させ,両極を連結すると,陽極では電子受容反応(還元反応),陰極では電子放出反応(酸化反応)が起こり,外部負荷を通って電子は陰極より陽極に移動し,電流が陽極から陰極に流れる。…

※「一次電池」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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