…奈良時代には大寺院に温室院,温室,湯屋などの名で沐浴施設が作られている。その当時の建物は残っていないが,鎌倉時代以後に再建された東大寺,法隆寺,興福寺などの〈大湯屋〉から判断すると,鉄製ないし木製の湯槽を中央に据え,釜で沸かした湯を入れて使う温湯浴式のものであったらしい。湯槽は鉄製のものは平たい釜のような形であり,木製のものは厚板を組んだ浅く細長い形のもので,《延喜式》(10世紀前半)によれば平安時代の宮中で用いられた木製の湯槽も同様の形をしている。…
…奈良時代の寺院の資財帳にはすでに温室院,温室,湯屋などの建物名がみられ,入浴施設としての湯屋であったと考えられる。これらの古代の湯屋の建物は残っていないが,東大寺,法隆寺などには鎌倉時代以後に再建された大湯屋が残っており,東大寺には釜のような形の鉄製の湯槽(ゆぶね)が,法隆寺には厚板を組んで作った木製の湯槽が中央に据えてある。いずれも別の釜で沸かした湯を運ぶか,または木樋などで送り込む取湯式であった。…
※「大湯屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」