日本大百科全書(ニッポニカ) 「天保六花撰」の意味・わかりやすい解説
天保六花撰
てんぽうろっかせん
講談。2代松林伯円作。河内山宗春(こうちやまそうしゅん)、片岡直次郎(直侍(なおざむらい))、三千歳(みちとせ)、金子市之丞(いちのじょう)、闇の丑松(くらやみのうしまつ)、森田の(森田屋ともいう)清蔵(せいぞう)、五十兵衛市(ごとべえいち)らが活躍する世話講談。これより河竹黙阿弥(もくあみ)が劇化した『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』は、1881年(明治14)東京・新富座初演以来、今日まで上演を重ねている。御数寄屋(おすきや)坊主の宗春(宗俊)が、松江侯へ奉公に上がっている上州屋の娘おなみを救うため、輪王(りんのう)寺の宮の御使僧と偽って松江邸に乗り込み、正体露顕したものの居直って成功する条は黙阿弥作品中でも屈指の名場面となっている。加えて袋物商丸利で宗春が珊瑚(さんご)をごまかしてゆする条や、三千歳を吉原から脱出させて召し捕らえられた直待を宗春が救う条など聴きどころは多い。3代錦城斎典山(きんじょうさいてんざん)、5代神田伯竜(はくりゅう)が得意とし、現在は6代伯竜の十八番となっている。
[延広真治]