奉公(読み)ホウコウ

デジタル大辞泉 「奉公」の意味・読み・例文・類語

ほう‐こう【奉公】

[名](スル)
他人の家に雇われて、その家事家業に従事すること。「行儀見習いとして奉公する」
国家朝廷のために一身をささげて働くこと。「滅私奉公
封建社会で、主家に対する従者奉仕義務。主家からの恩に対して、家臣が軍事義務で奉仕すること。
主家に対して功績があること。忠義であること。
「いかがくびをば斬るべき。さしも―の者であるものを」〈平家・一一〉
[類語]奉仕寄与貢献裨益ひえき尽力尽くす骨身を惜しまず粉骨砕身身をにする身を削る骨身を削る命をささげるボランティアサービスアフターサービスケアアフターケアボランタリー自発的公共心公徳心犠牲犠牲的サービス献身献身的ささげる挺身ていしん捨て石利他利他心志願慈善篤志有志殉ずる篤志家

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精選版 日本国語大辞典 「奉公」の意味・読み・例文・類語

ほう‐こう【奉公】

  1. 〘 名詞 〙
  2. おおやけに一身をささげて仕えること。天子、国家などのために力をつくすこと。
    1. [初出の実例]「諸国司怠慢猶多未進。奉公之道何其如此」(出典:類聚三代格‐一四・延暦二四年(805)三月二日)
    2. 「奉公の労をも弃(す)て、急ぎ下て有けるに」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐祭遵伝〕
  3. 武家社会で、家臣が主君のために働くこと。主君が与える所領安堵などの御恩に対して、家臣は軍役勤務を行なう。
    1. [初出の実例]「右且随奉公之浅深且糺器量之堪否各任時宜分充」(出典:御成敗式目(1232)二七条)
  4. 勤勉に任務を全うすること。功績のあること。忠義であること。
    1. [初出の実例]「四の宮の御ためには、紀伊守範光奉公の人とぞ見えたりける」(出典:平家物語(13C前)八)
  5. 他人の家に召し使われて勤めること。雇主の身分によって、武家奉公・町方奉公・在方奉公などの種類があり、また雇用期間により、譜代奉公年季奉公・一季奉公・日雇奉公などの別があった。
    1. [初出の実例]「奉公人をは御奉公越、其外上下之者舟に乗候はば、賃とり候へと被申付」(出典:梅津政景日記‐慶長一九年(1614)八月一一日)
    2. 「今は肥後の熊本に行て奉公せしとや」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)一)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「奉公」の解説

奉公
ほうこう

中世武家社会の封建的主従制のもとで,従者が主人に奉仕すること。鎌倉時代には,御家人が将軍に対して奉仕することのほか,得宗に御内人(みうちびと)(得宗被官)が奉仕することや,御家人にその被官が奉仕することも奉公であった。御家人の奉公には,戦時の従軍と大番役に代表される平時の警固などの軍事的負担と,関東御公事(みくうじ)などの経済的負担とがあった。御家人が奉公を怠った場合は,恩給地の没収などの処罰が科せられた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奉公」の意味・わかりやすい解説

奉公
ほうこう

封建社会において,主人に対して従者側が果す義務をいう。武士の場合はおもに軍事的負担をいう。一方,主人は,従者に対して所領安堵などの「御恩」を与える。道徳的には,双務契約というより,この「奉公」のほうを強いられる場合が多かった。

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普及版 字通 「奉公」の読み・字形・画数・意味

【奉公】ほうこう

公に尽くす。

字通「奉」の項目を見る

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旺文社日本史事典 三訂版 「奉公」の解説

奉公
ほうこう

封建社会において,従者が主家に奉仕する義務。

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世界大百科事典(旧版)内の奉公の言及

【恩給】より

…これら安堵,新恩をあわせて恩給というが,時に新恩のみをさす場合もある。御恩を与えられた御家人は軍役を中心とする奉公を義務づけられ,その義務への違反行為に対しては,所領没収の処置がとられた。そうでなくても新恩の場合は,一方的意思で没収されることもあり,またその所領の自由な売買は制限された。…

【御恩・奉公】より

…源氏の家長とその譜代の家人である東国武士との間の私的な主従関係が鎌倉幕府の成立により鎌倉殿(将軍)と御家人間の半ば公的な主従関係となる。この場合鎌倉殿の御恩とは,守護・地頭職の補任,所領の給与(恩領という),相伝私領の確認(本領安堵という),朝廷に対する官位の推薦,所領相論に際して領家の非法よりの保護等であり,御家人の奉公とは戦陣に臨んで身命を捨てて忠勤をはげむことを第1に,平時の軍役たる京都大番役鎌倉大番役,篝屋(かがりや)番役,警固役,供奉随兵役等,そして関東公事(くうじ)とよばれる将軍御所修造役等数々の経済的負担等であった。これらを総称して御家人役という。…

【奉公人】より

…平安時代後期以来,武士の封建的主従関係は,主人の従者に対する所領給与=〈御恩〉と,従者の主人に対する軍事的勤務=〈奉公〉という関係によって成立していたが,本来奉公人とは,武士のこの主従関係における従者をさし,主君に対する家臣の意味である。奉公人という称呼は,中世では上位の従者,家臣をさすものとして用いられるのが一般的であった。…

※「奉公」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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