幕府奥坊主頭の家に生まれ,水戸家でゆすりを働き捕らえられ獄死した。実録本《河内山実伝》と2世松林伯円作の講談《天保六花撰》(明治初年成立)によれば上野の使僧の名を詐称し,井伊侯(講談では雲州侯)邸でかたりを働いたことになっているが,この話は《男作五雁金(おとこだていつつかりがね)》(竹田出雲作,1742初演)のうち,案(あん)の平兵衛が呉服屋山川屋を助けるくだりを換骨奪胎したものとみられる。宗春は実録本では宗心,歌舞伎では宗俊とされて,舞台化は河竹黙阿弥によって講釈から脚色,1874年《雲上野三衣策前(くものうえのさんえのさくまえ)》として初演,1881年3月新富座で《天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)》として改作上演された。その無頼ぶりは極度に美化され,48万石の大名をやりこめる快男児として,玄関先の〈悪に強きは善にもと……〉のセリフに象徴されている。
→天保六花撰物
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…講談の2世松林伯円(しようりんはくえん)が得意とした《天保六花撰》を題材にした作品群。1823年(文政6)に獄死した河内山宗春(俊)(こうちやまそうしゆん),彼と連座した直次郎(直侍(なおざむらい)),彼となじんだ浅草奥山の茶酌女お直,のちの吉原の遊女三千歳(みちとせ),その他金子市之丞,森田清蔵,暗闇の丑松を加えた6人の悪党をめぐる物語を脚色した。その最初の作は1874年10月東京河原崎座上演の河竹黙阿弥作《雲上野三衣策前(くものうえのさんえのさくまえ)》であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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