改訂新版 世界大百科事典 「定高貿易法」の意味・わかりやすい解説
定高貿易法 (さだめだかぼうえきほう)
江戸時代の長崎貿易で1685-1858年(貞享2-安政5)にとられた,金・銀建てで決済する年間の取引額に一定の上限〈定高〉を設けた制度。幕府は来航唐船の激増を契機に,輸入単価・金銀流出の抑制のために,1685年から唐船は年間取引額を銀で6000貫目,オランダ船は金で5万両(銀3400貫目)に限り,唐船へは各船の積荷高・出帆地・乗組員数などを勘案して1艘ごとの取引高を定高に達するまで割り付け,残りは積み戻らせた。ほどなく残り荷の一部は,銅や俵物,諸色(海産物,樟脳,小間物など)と物々交換されるようになった(代物替(しろものがえ))。定高そのものは,18世紀以降の銅の減産に伴って,1742年(寛保2),90年(寛政2)の各〈半減令〉をはじめ,しだいに縮減されたが,1763年(宝暦13)から外国金銀が輸入されるようになると,定高以外に海産物主体の外売・別段売その他,各種名目の取引が増加し,総体としては定高の減少ほどではなく,1839年(天保10)の取引総額は,唐船8艘で銀6900貫目,オランダ船1艘との間に銀970貫目ほどであった。
執筆者:中村 質
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報