樟脳(読み)ショウノウ

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

樟脳

衣類の虫よけや芳香剤などに使われる。カンフル剤などの薬品にも利用され、かつては専売制のもと、国の財政を支えた時代もあった。現在では化学製品で代用されることが多いが、「天然樟脳を守る会」などによると、気分をリラックスさせるアロマテラピーの素材として天然樟脳の需要が増えているという。

(2013-01-05 朝日新聞 朝刊 筑後 1地方)

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大辞林 第三版の解説

しょうのう【樟脳】

テルペン類の一種。化学式 C10H16O クスノキの根や枝を水蒸気蒸留して得る無色透明の結晶。水に不溶、有機溶媒に可溶、特有の芳香をもつ。テレビン油から合成され、医薬品・香料・殺虫剤・防臭剤などに利用する。医薬分野ではカンフルという。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

樟脳
しょうのう
camphor

多環状モノテルペンケトンの一つで、医薬分野ではカンフルともいう。特有の香気をもつ半透明、昇華性の安定な粒状結晶。中国の揚子江(ようすこう)以南、海南島、台湾および日本が主産地であるクスノキ科のクスノキには、樟脳を生産する本樟と、リナロールを主成分とする芳樟(ほうしょう)とが著名である。化学構造から右旋性(d体)、左旋性(l体)、ラセミ体(dl体)の3種の光学異性体がある。本樟または芳樟の根、幹、小枝の切片(チップ)、葉を水蒸気蒸留すると、樟脳原油とともに泥状結晶が留出し、これを濾取(ろしゅ)すると粗製樟脳が得られる。
 原木よりの収率は粗製樟脳0.8~1.0%、樟脳原油1.6~2.0%である。樟脳原油を分留すると再生樟脳が得られる。粗製樟脳とともに昇華法により精製して精製樟脳とする。それは精製度によって甲種樟脳(A)、改良乙種樟脳(純度98%以上)、乙種樟脳(B)(純度95%以上)などの区別がある。精製樟脳は粉末状または粒状として製品化する。
 第二次世界大戦後、中華民国が台湾を支配したため天然樟脳の生産は著しく減少した。日本における樟脳の生産量は1951年(昭和26)の4200トンが最高であり、1962年に樟脳専売制度が廃止されたために、その生産量は急激に減少した。[佐藤菊正]

合成樟脳の製法

最近は天然樟脳が少ないので、α-ピネンを出発原料としたdl体(光学不活性)の合成樟脳が主流を占めている。すなわち、α-ピネンを酸化チタンなどの触媒により異性化させカンフェンとし、これを氷酢酸‐硫酸によって酢酸イソボルニルとし、さらにアルカリ水溶液でけん化してイソボルネオールとする。最後に、イソボルネオールを銅触媒によって接触的脱水素し、dl-樟脳を合成する。
 ヒンドゥー教徒の焼香用香料として用いられるほか、防虫剤、医薬品、ボルネオール製造原料として重要である。[佐藤菊正]

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精選版 日本国語大辞典の解説

しょう‐のう シャウナウ【樟脳】

〘名〙 テルペン系ケトン化合物の一つ。化学式 C10H16O 無色透明、板状結晶。クスノキの材片を水蒸気蒸留してつくる。特異な芳香がある。有機溶剤によく溶けて、水には溶けにくい。セルロイドや火薬の製造原料に用いるほか、興奮剤、香料、防虫剤、防臭剤などに用いられる。カンフル。カンファー。
※言継卿記‐永祿一三年(1570)六月一六日「女官あかか一昨日丁香、藿香〈一両宛〉、甘松〈二分〉、生脳〈少〉致」
※俳諧・虎渓の橋(1678か)賦何雀俳諧「樟脳すこし香に匂ひける〈江雲〉 人はいさ心もしらすひせんかさ〈松意〉」

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