日本大百科全書(ニッポニカ) 「小簾の戸」の意味・わかりやすい解説
小簾の戸
こすのと
地歌(じうた)の曲名。端歌物(はうたもの)。本調子。作者については、『歌曲時習考』の目録に「作詞・歌妓(かぎ)首のぶ。作調・峰崎勾当(こうとう)」とある。「首のぶ」とは、大坂島之内(しまのうち)の芸妓(げいぎ)のぶの渾名(あだな)で、その首が艶冶(えんや)であることからこうよばれた。曲亭馬琴(きょくていばきん)の『羈旅漫録(きりょまんろく)』の「首信(くびのぶ)が伝」に詳しく、西沢一鳳(いっぽう)の『皇都午睡(ごすい)』、浜松歌国の『南水漫遊』などにも紹介されている。曲は艶麗で思わせぶりな色気にあふれ、「月やはもののやるせなき」あたりの作曲には、滋味に富んだ渋い手がつけられている。
[林喜代弘]