歌舞伎作者。一説に1801年生れ。通称正本屋利助。狂言綺語堂,李叟などと号す。大坂の演劇書肆に育ち,家業のかたわら3世中村歌右衛門,7世市川団十郎などのために,劇作の筆をとった。代表作に《花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつぶさ)》(1830),《女猿曳諷(おんなさるひきかどでのひとふし)》(1838),《けいせい浜真砂(はまのまさご)》(1839)などがある。一方,古来の浄瑠璃,歌舞伎の脚本や文献を収集し,演劇の考証を行った。《皇都午睡(みやこのひるね)》《伝奇作書(でんきさくしよ)》《脚色余録(きやくしよくよろく)》などの随筆を残し,今日の演劇研究に資している。西沢一風は曾祖父にあたる。
執筆者:武井 協三
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江戸後期の歌舞伎(かぶき)作者、考証家。本名利(理)助。別号一鳳軒。浮世草子や浄瑠璃(じょうるり)の作者を兼ねた正本屋(しょうほんや)の主人西沢一風(1665―1731)は曽祖父にあたる。家業の正本屋と貸本屋を経営、そのかたわら戯作(げさく)、狂歌、俳諧(はいかい)を試みた。文政(ぶんせい)年間(1818~30)には狂言作者奈河一洗(ながわいっせん)、奈河晴助(はるすけ)や金沢竜玉(りゅうぎょく)(3世中村歌右衛門(うたえもん)の筆名)の代作をした。狂言作者として名を出したのは1830年(天保1)からで、2世中村富十郎や3世中村歌右衛門らのために作品を書いた。晩年は家業を義弟に譲って演劇の考証に専念。台本に『けいせい稚児淵(ちごがふち)』『花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつぶさ)』(八犬伝)、『けいせい浜真砂(はまのまさご)』(女五右衛門(おんなごえもん))などがあるが、創作より脚色・改作が多い。考証随筆『伝奇作書』『皇都午睡(みやこのひるね)』『脚色余録』などは貴重な演劇資料となっている。
[服部幸雄]
(上野典子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
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…そして〈おらァ江戸っ子だ〉などと,江戸生れをやたらに自慢する者が多くなった。幕末期に西沢一鳳が著した《皇都午睡》には,〈二親共に江戸産れの中に出来たは真の江戸子なれど(中略),二親の内何れぞ江戸の者なれば,相手は皆他国の者也。然れば大方が斑(まだら)といふ者にて,江戸子一歩,斑三歩,残り六歩は皆他国在郷ものゝ寄合の中にて江戸へ出会して出生せしなれば,やはり田舎子也。…
…歌舞伎,浄瑠璃資料。西沢一鳳(いつぽう)著。写本7編21巻。…
※「西沢一鳳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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