西沢一鳳(読み)ニシザワイッポウ

デジタル大辞泉 「西沢一鳳」の意味・読み・例文・類語

にしざわ‐いっぽう〔にしざは‐〕【西沢一鳳】

[1802~1853]江戸後期の歌舞伎狂言作者大坂の人。西沢一風曽孫家業書店貸本屋を営みながら、劇作および演劇考証に励んだ。著「脚色余録」「皇都午睡みやこのひるね」など。

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精選版 日本国語大辞典 「西沢一鳳」の意味・読み・例文・類語

にしざわ‐いっぽう【西沢一鳳】

  1. 江戸後期の歌舞伎作者。書肆正本屋利助。号、狂言綺語堂・李叟。西沢一風の曾孫。著「伝奇作書」「脚色全録」など。享和元~嘉永五年(一八〇一‐五二

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改訂新版 世界大百科事典 「西沢一鳳」の意味・わかりやすい解説

西沢一鳳 (にしざわいっぽう)
生没年:1802-52(享和2-嘉永5)

歌舞伎作者。一説に1801年生れ。通称本屋利助。狂言綺語堂,李叟などと号す。大坂の演劇書肆に育ち,家業のかたわら3世中村歌右衛門,7世市川団十郎などのために,劇作の筆をとった。代表作に《花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつぶさ)》(1830),《女猿曳諷(おんなさるひきかどでのひとふし)》(1838),《けいせい浜真砂(はまのまさご)》(1839)などがある。一方,古来の浄瑠璃,歌舞伎の脚本文献を収集し,演劇の考証を行った。《皇都午睡(みやこのひるね)》《伝奇作書(でんきさくしよ)》《脚色余録(きやくしよくよろく)》などの随筆を残し,今日の演劇研究に資している。西沢一風は曾祖父にあたる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西沢一鳳」の意味・わかりやすい解説

西沢一鳳
にしざわいっぽう
(1802―1852)

江戸後期の歌舞伎(かぶき)作者、考証家。本名利(理)助。別号一鳳軒。浮世草子や浄瑠璃(じょうるり)の作者を兼ねた正本屋(しょうほんや)の主人西沢一風(1665―1731)は曽祖父にあたる。家業の正本屋と貸本屋を経営、そのかたわら戯作(げさく)、狂歌、俳諧(はいかい)を試みた。文政(ぶんせい)年間(1818~30)には狂言作者奈河一洗(ながわいっせん)、奈河晴助(はるすけ)や金沢竜玉(りゅうぎょく)(3世中村歌右衛門(うたえもん)の筆名)の代作をした。狂言作者として名を出したのは1830年(天保1)からで、2世中村富十郎や3世中村歌右衛門らのために作品を書いた。晩年は家業を義弟に譲って演劇の考証に専念。台本に『けいせい稚児淵(ちごがふち)』『花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつぶさ)』(八犬伝)、『けいせい浜真砂(はまのまさご)』(女五右衛門(おんなごえもん))などがあるが、創作より脚色・改作が多い。考証随筆『伝奇作書』『皇都午睡(みやこのひるね)』『脚色余録』などは貴重な演劇資料となっている。

[服部幸雄]

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朝日日本歴史人物事典 「西沢一鳳」の解説

西沢一鳳

没年:嘉永5.12.2(1853.1.11)
生年:享和1(1801)
江戸後期,上方の歌舞伎狂言作者,考証家。通称正本屋利助ほか。号は李叟,狂言綺語堂ほか。俳名秋声庵蒼々,滄々。西沢一風の曾孫として大坂の演劇書肆の家に生まれ,家業のかたわら歌舞伎脚本の代作を楽しむが,天保2(1831)年以降は番付に狂言作者として名前を出し,大坂を中心に3代目中村歌右衛門らのために筆を執り,「花魁莟八総」など関与した作品は100を超える。創作の才には乏しく,むしろ長く劇界に携わった経験と文献を豊富に有する環境とを生かして著述した『皇都午睡』(1850),『伝奇作書』(51),『脚色余録』(同)ほかの演劇の考証随筆に見るべきものが多い。<参考文献>『新群書類従』1,2巻

(上野典子)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西沢一鳳」の意味・わかりやすい解説

西沢一鳳
にしざわいっぽう

[生]享和2(1802)
[没]嘉永5(1852).12.2.
江戸時代後期の歌舞伎狂言作者。名,利助,のち九左衛門。別号,綺語堂,李叟。大坂の人。浮世草子作者西沢一風の曾孫で,家業の正本屋,貸本屋を営むかたわら歌舞伎狂言の台本も執筆した。歌舞伎,浄瑠璃の考証,随筆にすぐれた業績をあげ,著書に『伝奇作書』 (1843~51) ,『皇都午睡』 (50) ,『脚色余録』 (51) ,『綺語文章』『讃仏乗』などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「西沢一鳳」の解説

西沢一鳳 にしざわ-いっぽう

1801-1853* 江戸時代後期の歌舞伎作者,本屋。
享和元年生まれ。西沢一風の曾孫。大坂で正本屋,貸本屋をいとなむかたわら,歌舞伎の脚本を執筆。また「伝奇作書」など演劇に関する考証随筆ものこした。嘉永(かえい)5年12月2日死去。52歳。通称は正本屋利助。別号に狂言綺語堂,李叟など。作品に「花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつふさ)」など。

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世界大百科事典(旧版)内の西沢一鳳の言及

【江戸っ子】より

…そして〈おらァ江戸っ子だ〉などと,江戸生れをやたらに自慢する者が多くなった。幕末期に西沢一鳳が著した《皇都午睡》には,〈二親共に江戸産れの中に出来たは真の江戸子なれど(中略),二親の内何れぞ江戸の者なれば,相手は皆他国の者也。然れば大方が斑(まだら)といふ者にて,江戸子一歩,斑三歩,残り六歩は皆他国在郷ものゝ寄合の中にて江戸へ出会して出生せしなれば,やはり田舎子也。…

【伝奇作書】より

…歌舞伎,浄瑠璃資料。西沢一鳳(いつぽう)著。写本7編21巻。…

【望月】より

…もう一つは通称《今様望月》で,82年東京新富座初演。西沢一鳳の遺稿に河竹黙阿弥が補筆。3世杵屋正次郎作曲。…

※「西沢一鳳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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