日本大百科全書(ニッポニカ) 「廊坊立花伝書」の意味・わかりやすい解説
廊坊立花伝書
ろうのぼうりっかでんしょ
いけ花伝書。大・小二巻よりなる。奥書に「六角堂池坊(いけのぼう)一流弟子宣阿弥(せんあみ)」と相伝者名を記し、受伝者が長谷寺執行廊坊大部卿家(はせでらしぎょうろうぼうだいぶきょうけ)であるところからこの名がある。「かふ」「花ふ」ともいう。小巻の内容は花形絵を主体に墨と朱、緑の淡彩で描かれ、これに簡単な説明文があり、座敷飾りにおける飾り方とその法式に即して花図が描かれている。大巻は「花のふこれをひすべし」の内題で始まり、立花(りっか)や砂の物など花に関する心得を、とくに楽しみの花を中心として記述している。当時の池坊相伝書にみられない心得を秘文として記しているところからも貴重ないけ花資料とされる。
[北條明直]