引摺(読み)ひきずる

精選版 日本国語大辞典 「引摺」の意味・読み・例文・類語

ひき‐ず・る【引摺】

[1] 〘他ラ五(四)〙
① 物を垂らして床面や地面などに触れさせる。
史記抄(1477)八「日本には裳のひの袴のなんどと云てひきずるは」
② 地面をすってひっぱっていく。
※応永本論語抄(1420)郷党第一〇「足のつまさきを挙てきびすの方をばあげずして、ひきづりて閑に歩を云」
浮世草子・好色一代男(1682)三「跡より竹杖を引ずるは」
③ ひっぱっていく。
※天草本平家(1592)三「クルマ ニ ノッテ ウシ ニ fiqizzurareta(ヒキヅラレタ)コト」
④ 音声を長く延ばす。
※申楽談儀(1430)音曲の心根「とかやと、とを引て云を、うら山しがりて、とうかやなどひきずる也」
⑤ 長びかせる。だらだら続ける。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三「ひきずる裾と引ずるお客」
⑥ 望んでいないものを不本意ながら持ち続ける。また、望んでいないものを伴って来る。
普賢(1936)〈石川淳〉一二「涜(けが)らはしい聯想を引きずった金なんか真平だ」
⑦ 状況や人の心に影響を与える。力を及ぼして思い通りにする。
いのち初夜(1936)〈北条民雄〉「そのつまらぬことこそ、自分をここまでずるずると引きずって来た正体なのだと気づいた」
[2] 〘自ラ五(四)〙 地面の上などに垂れて引かれる。
※落語・金の味(1892)〈三代目三遊亭円遊〉「其(その)異人が巨大(おほきい)んでげして、馬鹿に巨大から背広の服が引摺(ヒキズル)んで」
[補注]中世後期から例が見え、抄物やキリシタン資料には「ひきづる」と「ひきずる」の両形があり、歴史的仮名遣いとしてどちらが正しいかは未詳

ひき‐ずり【引摺】

〘名〙
① ひきずること。
② (女が着物の裾をひきずるようにして着る意から) なまめかしくしゃれこんで、ろくに働かない女をあざけっていう語。引摺女。ひきずりづら。おひきずり。
※浮世草子・元祿曾我物語(1702)三「引ずりめがうせてから、所帯には性根も入れずに」
浄瑠璃双蝶蝶曲輪日記(1749)四「近所の徳は引ずりで軒伝ひ」
※東都歳事記(1838)一二月二六日「街中せましと搗きたつることいさましく昼夜のわかちなし。俗是を賃餠又は引ずりなどいふなり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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