日本大百科全書(ニッポニカ) 「弽」の意味・わかりやすい解説
弽
ゆがけ
弓を引くとき指の痛みを防止するために用いる鹿革(しかがわ)の手袋様の弓具の一種。古くは由加介、韘、弓加介、、、射沓などの字があてられ、また弓懸、弓掛、指懸などとも書く。弽の原型は初め弓射のみでなく刀槍(とうそう)にも使用できる5本指を覆った皮手袋様のものであったと思われるが、のちになり、とくに右親指を保護する弓射専用のものが考案された。
弽は時代や使用する目的によりさまざまな形状や構造のものがある。大別すると、(1)柔帽子(やわらかぼうし)=右手親指内側に腹皮を当てた程度のもので、5本指を覆った騎射用の弽(手袋)や今日初心者が使用する三本弽(俗にちょんがけ)など。(2)堅帽子(かたぼうし)=江戸時代堂前用として考案された弽。これは角型や木型を右親指に入れ堅くしたもので、堂前専用の四つ弽、的前用の三つ弽、礼家で使う諸(もろ)弽がある。
なおほかに、左手指の痛み防止のため押手弽(おしでゆがけ)とよばれるものもある。
[入江康平]