精選版 日本国語大辞典 「手袋」の意味・読み・例文・類語
て‐ぶくろ【手袋】
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手にはめる手形の袋状手覆いの総称。手套(しゅとう)ともいう。
[田中俊子]
形、用途、素材などによってさまざまのものがある。(1)形から2種類に大別できる。(a)グラブglove 5本の指先が分かれたもの。野球のグラブはこれにあたる。ボクシング用のものはグローブと称するが、形からは後述のミトンにあたり、例外である。乗馬用の長手袋や剣道用の籠手(こて)は形状からはこれに属するが、ゴントレットgauntletと称される。日本の弓懸(ゆがけ)もこれに属し、手袋という。(b)ミトンmitten 親指だけを分離した二またのもの。野球用のミットmittはこの一種である。婦人用の指先部のない絹やレース製の装飾用の手袋も、ミットまたはミトンと称される。(2)用途からは保護、防寒用と装飾、儀礼用とに大別でき、それぞれの用途に適する素材が使われている。(a)保護、防寒用 防寒用として一般的に用いられているものは、保温性の高い羊毛、カシミヤ、アンゴラ、合繊などの織物、編物や、羊、山羊(やぎ)、カモシカ、鹿(しか)、牛などの伸縮のきく柔らかいなめし革でつくられる。今日では、合成皮革もかなり使われている。また寒冷地方の子供用にはナイロン、ポリエステルタフタの間に合繊綿を挟んだキルティング地のミトンなどもある。保護用のうち、単純な作業には木綿糸を粗く編んだ軍手、水仕事用にはゴム手袋が広く使われている。精密工業の作業用には木綿などの薄地メリヤス製が、医療、衛生作業用にはポリビニル手袋やゴム手袋があり、さらに特殊作業用として、レントゲン技師用の鉛加工手袋、軽金属性の防火手袋などもある。防寒、滑り止め、けが、汚れなどからの保護の目的で、スキー、ゴルフ、野球、ボクシング、弓道、ドライブなど、さまざまなスポーツにも種々の手袋が使われている。(b)装飾、儀礼用 礼装には欠くことのできないものである。男子礼装では白のキッドが正式とされているが、絹、麻、合繊のものも用いられる。婦人用の正装にも、白キッドや肘(ひじ)上までの白い絹や合繊の長手袋を用いる習わしとなっている。そのほかの場合は、色や丈も礼服にあわせてさまざまである。装飾、儀礼用は、一般に手にぴったりしたものが多い。
長さは手首までのもの、手首と肘の中間のもの、肘またはそれ以上のものと、およそ短、中、長の三段階に分けることができる。
[田中俊子]
晩期旧石器時代に、防寒の目的で指のない単なる袋状の肘丈の手袋にあたるものを用いた人類もあったとみる考古学者もあり、かなり古い時代から用いられたらしい。最古の遺品と考えられるのは、紀元前1360年ごろ、古代エジプトのトゥト・アンク・アメン王(ツタンカーメン)のものである。結び紐(ひも)のついた5本の指のある中丈の、文様部分は染色した獣毛繊維で織り出した、麻の綴織(つづれおり)の精巧な手袋である。古代ギリシアのホメロスの作品にギリシア人の手袋が、またクセノフォンXenophon(前430ころ―前354ころ)の著作にペルシア人の防寒用の5本指の革手袋がみられる。古代ローマ時代にもミトンがいろいろな労働用に使われたという記録があるが、これらはまだ珍しいものであった。一方では古代に、武具の一部の籠手(こて)(ゴントレット)として同様のものが発達していた。これらは、やがてヨーロッパにも伝わり、僧侶(そうりょ)の労働用布手袋から、7世紀ごろには宗教上や王侯貴族の装身具となり、上層ではかなり普及した。布製や皮革製で刺しゅうや宝石をちりばめたものも登場し、司祭や王たちのものはことにみごとであった。こうして手袋は、しだいに装飾要素を強くしていき、身分や階級の象徴として重視されるようになる。土地を与える儀式や、僧侶に高い地位を与える際に、その象徴として手袋を与える習慣もおこっている。
12世紀には5本指のグラブが登場。14世紀には編手袋も現れ、上層男子では一般的なものとなった。これらは甲冑(かっちゅう)の一部であった籠手の発達と密接に関連していた。16世紀からは婦人の装飾の手袋が流行し、以来婦人にも重要なアクセサリーとなる。エリザベス1世(在位1558~1603)は豪華に飾りたてた手袋を愛用し、流行に拍車をかけた。また、手袋製造技術は飛躍的な進歩をみせ、柔らかいキッドの手袋がフランスのグルノーブルからイギリスに出荷され、その後グルノーブルは良質な革手袋の産地として知られるようになる。19世紀までフランス製の高級手袋はイギリス人の手を経て売られていた。もっとも華麗なのは17世紀、ルイ13世(在位1610~43)、ルイ14世(在位1643~1715)の時代で、婦人服の袖(そで)丈が短くなったのに呼応して、肘丈までの長い手袋が出現し18世紀まで続く。豊かなレースで飾られたキッドや絹の手袋が用いられた。
19世紀の男子用手袋はシンプルで一般に短くなり、正装にはキッドの白、日中には色物、婚礼にはラベンダー色を用いるのがエチケットとされ、今日に至っている。婦人服の袖が19世紀初期にいっそう短くなったのにしたがって、手袋は肘丈か、さらに長い丈で腕に密着したシンプルなものが現れた。袖なしの正装には現在もそれが使われる習慣である。それ以来長短各種の簡潔な形に落ち着き、現在に至っている。
日本では徳川家康の遺品のなかにもみられるが、一般には幕末の軍服導入とともに、木綿編みの作業用手袋、いわゆる軍手が導入されたのに始まる。これは、斜陽武士階級の手内職でつくられていた。その後普及し、俳諧(はいかい)では冬の季語とされている。
また手袋は、手のひらでつくった袋(両手で水をすくい上げて飲むときの形)をも称し、手を懐(ふところ)へ入れていること(ふところ手)や、鳥が片脚をあげて腹毛のなかに入れることをもいう。したがって「手袋を引く」とは、手を引っ込ませる、手出しをしないの意となる。また「手袋を投げる」は、決闘を申し込むときの西洋の風習から、相手に決定的な断交を宣言するときなどに用いられる。
[田中俊子]
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