日本大百科全書(ニッポニカ) 「彩釉れんが」の意味・わかりやすい解説
彩釉れんが
さいゆうれんが
glazed brick
外側となる面に釉薬を施したれんが。釉瓦(ゆうが)ともいう。表層にはしばしば浮彫りをもつ。れんが建築の壁面装飾として、古代オリエントや明(みん)・清(しん)時代の中国で多用された。材質上は施釉陶器と同じで、耐久性に優れ、鮮麗な装飾効果をもつが、施工には熟練を要する。とくに大きな壁面にれんがを組み合わせて一つの画像を構成する場合、各部分のれんがは別々にデザインされる必要があり、複雑精緻(せいち)な作業が必要となる。このため一般の住宅などに用いられることは少なく、優れた遺例の多くは宮殿、城壁、神殿、寺院などに限られている。バビロンのイシュタル門(前6世紀)の動物浮彫りの列、スーサ王宮の武人像の行列などが、古代の代表的作例である。彩釉れんがはイスラム世界に入って彩釉タイルの発達とともに衰え、大規模な使用はみられなくなるが、中国では施釉の瓦(かわら)とともに長く存続し、北京(ペキン)の紫禁城(故宮博物院)をはじめ各地に多くの作例がみられる。
[友部 直]