内科学 第10版 の解説
心臓血管ホルモンの種類と作用(心臓血管ホルモンと疾患)
心臓血管ホルモン(cardiovascular hormone)は大きく2つのホルモン群に分類することができる(図12-13-1).1つは,心臓血管刺激ホルモンともいえるホルモンで,心臓に対して陽性変時作用・陽性変力作用を有し,心肥大や心臓の線維化を惹起する.血管に対しては血管平滑筋収縮作用を有し,血管平滑筋細胞増殖作用を有している.もう1つは,心臓血管保護ホルモンともいえるもので,心臓に対しては,陽性変時作用・陽性変力作用を有さず,心筋細胞肥大抑制作用,線維化抑制作用を有しており,血管に対しては,血管平滑筋弛緩作用と血管平滑筋細胞増殖抑制作用を有している.前者の代表はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系,交感神経系,エンドセリンであり,後者の代表が,Na利尿ペプチドファミリーである.心臓血管刺激ホルモンと心臓血管保護ホルモンでは作用が互いに機能的に拮抗している.利尿作用に関してもアンジオテンシンⅡは近位尿細管での,アルドステロンは集合管でのNa再吸収を促進する.一方Na利尿ペプチドは利尿,Na利尿作用を有している. 正常の状態ではこれらの2つのホルモン系のバランスは上手く保たれている.しかし,心不全や心肥大時にはこのバランスが破綻し,心臓血管刺激ホルモンが過剰に活性化される.[斎藤能彦]
■文献
Nakao K, Ogawa Y, et al: Molecular biology and biochemistry of the natriuretic peptide system. I: natriuretic peptides. J Hypertens, 10: 907-912, 1992.
Saito Y: Roles of atrial natriuretic peptide and its therapeutic use. J Cardiol, 56: 262-270, 2010 .
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報