日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルドステロン」の意味・わかりやすい解説
アルドステロン
あるどすてろん
aldosterone
副腎(ふくじん)皮質から分泌されるステロイドホルモンの一つ。副腎皮質ホルモンには、主として糖質の代謝を調節する作用のある糖質コルチコイド(グルココルチコイド)と、おもに電解質や水分のバランスを調節する鉱質コルチコイド(電解質コルチコイド)の2種類があり、アルドステロンはとくに後者の作用を強く示すものの代表である。
アルドステロンは鉱質コルチコイド受容体に結合して核内に移行した後、標的遺伝子上に結合し、その結果転写がおこりアルドステロン誘導タンパク質が生合成される。そのタンパク質は尿細管側では上皮性Na+チャネルを発現させ、血管基底膜側ではNa+, K+-ATPアーゼを活性化してNa+イオンの再吸収を促進する。
アルドステロンの分泌は1日に0.125mgで、血漿(けっしょう)タンパクに結合する割合は低く、半減期も短い(約20分)。また、アルドステロンの通常の分泌量はかなり低い。食餌(しょくじ)中の食塩の量が減るとアルドステロンの分泌が高まる。分泌されたアルドステロンのうち1%以下が遊離型のまま尿中に排泄(はいせつ)され、5%は酸性不安定抱合型の形で尿中に排泄される。また、最大40%までのアルドステロンが肝臓で還元されてテトラヒドロ型となり、さらにグルクロン酸で抱合され、テトラヒドログルクロナイド(不活化型)として排泄される。
アルドステロンはほかの副腎皮質ホルモン(たとえばコルチゾン)とは異なり、抗炎症剤、鎮痛剤としての効力はほとんどない。
[小泉惠子]
『藤田敏郎編『アルドステロンとRAAS――高血圧・臓器障害のパラダイムシフト』(2003・エルゼビア・ジャパン)』▽『伊藤貞嘉編著『二次性高血圧』(2003・メディカルレビュー社)』▽『植松俊彦他編『シンプル薬理学』改訂版(2004・南江堂)』▽『田中千賀子他編『NEW薬理学』(2007・南江堂)』