改訂新版 世界大百科事典 「志野陶」の意味・わかりやすい解説
志野陶 (しのとう)
桃山時代に現岐阜県東濃地域で焼かれた雅陶の一種。淡黄白色のざんぐりとした素地に長石単味の乳濁釉を施し,簡素な鉄絵を加える。柚子肌(ゆずはだ)の釉のところどころ,および露胎部に赤い火色の出たものが好まれた。器種は茶碗,花生,水指,建水などの茶陶を主とし,鉢,皿,向付,猪口などの食器類のほか,香合(こうごう),油盞などさまざまのものがある。種類には,(1)文様のない無地志野,(2)釉下に鉄絵を施した絵志野(えしの),(3)素地に鉄分の多い泥漿(でいしよう)を施し,搔落し文様を施して長石釉をかけた鼠志野(ねずみしの),(4)やや鉄分の少ない泥漿をかけ,長石釉を施して赤く発色させた赤志野,(5)鉄分の多い土と白色の土を練り上げてつくった練上志野(ねりあげしの)などがある。16世紀前半に瀬戸,美濃で発生した,新様式の大窯で焼かれた高火度の灰・長珪石釉の展開過程において,天正年間(1573-92)に長石単味の施釉技法として生み出されたものであり,美濃独特の和物茶陶および高級食器として珍重された。
→美濃焼
執筆者:楢崎 彰一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報