惨・酷(読み)むごい

精選版 日本国語大辞典 「惨・酷」の意味・読み・例文・類語

むご・い【惨・酷】

〘形口〙 むご・し 〘形ク〙
物事の状態や程度がはなはだしい。すごい。
※虎明本狂言・二千石(室町末‐近世初)「其お手もとがむごひほど似まらした」
② 見るにたえないほど痛ましい。悲惨である。
歌舞伎桑名屋徳蔵入船物語(1770)三「挙句の程に諸道具売払って家出しやったではないか、ヲヲ、さうぢゃ、これは惨(ムゴ)いと呆れ」
③ 思いやりがない。薄情である。無慈悲である。残酷である。ひどい。
※虎明本狂言・武悪(室町末‐近世初)「しうめいとて、今せいばひする事むごひ事なれども」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「睦まじいめをとらしい寝物語もせう物と、楽しむ間もなくほんにむごいつれない」
[語誌](1)近松世話浄瑠璃では③の挙例「心中天の網島」など、会話文に偏る傾向が認められる。また「志不可起」(一七二七)でも、見出し語に掲出されており、口頭語的性格の強い語であったことがうかがわれる。
(2)派生語にムゴラシイ・ムゴタラシイがあり、いずれもムゴイの強調形である。ムゴタラシイはムゴラシイよりも成立年代は下り、先行するムゴラシイの強調形として、成立した語形であると考えられる。
むご‐が・る
〘他ラ四〙
むご‐げ
〘形動〙
むご‐さ
〘名〙

むご・し【惨・酷】

〘形ク〙 ⇒むごい(惨)

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