打靡(読み)うちなびく

精選版 日本国語大辞典 「打靡」の意味・読み・例文・類語

うち‐なび・く【打靡】

[1] 〘自カ四〙 (「うち」は接頭語)
草木、髪などがさっと横に伏せる。
万葉(8C後)一・八七「ありつつも君をば待たむ打靡(うちなびく)わが黒髪に霜の置くまでに」
源氏(1001‐14頃)若菜下「風にうちなびく下簾(したすだれ)のひまひまも」
② 人が横になる。横臥(おうが)する。
※万葉(8C後)一・四六「阿騎の野に宿る旅人打靡(うちなびき)(い)も寝(ぬ)らめやも古(いにしへ)思ふに」
③ (心がなびくという比喩的な言い方から転じて) 力や権威に服従する。心服する。相手に同意する。慕い寄る。
※万葉(8C後)一七・三九九三「霍公鳥(ほととぎす) 鳴きし響(とよ)めば 宇知奈妣久(ウチナビク) 心もしのに そこをしも うら恋しみと」
※狭衣物語(1069‐77頃か)一「こよなううちなびき給へる御けしき浅からねば」
[2] 〘他カ下二〙 攻めて服従させる。また、銃砲を撃って鎮圧する。
太平記(14C後)三「其勢すでに七百余騎、国中を打靡(ナビケ)
[3] 草のなびく様子から「草」にかかり、また、春には草木がなびくところから「春」にもかかる。
※万葉(8C後)八・一四二二「打靡(うちなびく)春来(きた)るらし山の際(ま)の遠き木末(こぬれ)の咲き行く見れば」
※万葉(8C後)八・一四二八「おし照る 難波を過ぎて 打靡(うちなびく) 草香の山を 夕暮に わが越えくれば」

うち‐なびか・す【打靡】

〘他サ四〙 (「うち」は接頭語)
① 風が草木を横ざまに傾ける。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② 服従させる。征服する。
※屋代本平家(13C前)剣「北陸道七ケ国を打靡して」

うち‐なびき【打靡】

(春は草木がなびくところから) 「春」にかかる。うちなびく。
※高遠集(1011‐13頃)「うちなびき春立ちにけり青柳のかげふむ道に人のやすらふ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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