日本歴史地名大系 「昔阿波物語」の解説
昔阿波物語
むかしあわものがたり
一冊 二鬼島道智(仁木又五郎義治)著
成立 文禄―慶長年間
写本 国立公文書館・静嘉堂文庫・東京大学史料編纂所ほか
解説 安政二年に野口年長所蔵本(写本)を書写した写本(国立国文学研究資料館史料館所蔵「徴古雑抄続編」)によると、計七九の一つ書きから成る。前書に元亀三年以降は見聞に基づき、永禄以降は古老からの聞取りに基づいたことが記される。本文中に天正一〇年の中富川の合戦について「此軍の事ハ道知か拾八歳にて御供申候故、能そんし候」とみえることから、道智(知)の作と知れる。道智は三好氏の被官で、のちに蜂須賀氏によって紺屋司に取立てられた仁木又五郎義治の法名で、二鬼島を名乗った。守護細川氏にも簡略に触れるが、記事の大半は阿波三好氏に関連するもので、最も新しい内容は蜂須賀氏の阿波入国の記事である。年代等の誤りもままあるが具体性に富み、戦国末期の阿波の情勢を知るうえで不可欠の記録である。なお類書に道智作とみられる「みよしき」があり、同書は本書作成の下書あるいは底本となったと推定される。
活字本 戦国史料叢書四国史料集・「阿波国徴古雑抄」
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報