改訂新版 世界大百科事典 「最大原理」の意味・わかりやすい解説
最大原理 (さいだいげんり)
maximum principle
自動制御系の設計法の一つに最適制御があるが,最大原理は最適制御の基礎となる定理で,1950年代の終りにソ連の数学者ポントリャーギンらによって確立された。この原理は制御系の設計法に新しい視点を導入し,60年代の現代制御理論の発展の原動力となった。
dx/dt=f(x,u,t)で表されるとする。x=(x1,……,xn)は状態ベクトル,u=(u1,……,ur)は入力ベクトルである。任意のtである有界な閉集合Uに属する区分的に連続な時間関数u(t)が制御入力として許されるとし,そのようなu(t)を許容制御admissible controlとよぶ。許容制御u(t)のうち,評価関数を最小にするものを最適制御とよぶ。最適制御が満足すべき必要条件を与えるのが最大原理である。いま許容制御u(t)に対して関数 ψ0(t),……,ψn(t)を微分方程式の解として定義する。また関数を定義すると,最大原理は次のように述べられる。もしu(t)=u*(t)が最適制御であるならば,対応する状態ベクトルx*(t)とψ*(t)は任意のtでを満足し,また最終時刻t1で
H(ψ*(t1),x*(t1),u*(t1),t1)=0となる。
執筆者:木村 英紀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報