構造因子(読み)コウゾウインシ

化学辞典 第2版 「構造因子」の解説

構造因子
コウゾウインシ
structure factor, structure amplitude

任意の物質系からの干渉性X線散乱波を与える因子で,物質中の電子密度分布ρ(r),すなわち構造に依存する.干渉性散乱強度Iは,

IIe|F|2
で与えられる.Ie は1個の電子による散乱強度で,Fをその物質系に対する構造因子といい,

となる.ここで,rは体積素片dνrの位置ベクトル,λはX線の波長,ss0 はそれぞれ入射X線,回折X線方向の単位ベクトルである.物質系が1個の原子のときは原子散乱因子(または原子構造因子)fとなる.結晶によるX線回折の場合は,

IIe|Fhkl|2N2
となる.Nは結晶試料中の単位格子の数で,Fhkl を結晶構造因子,または単に構造因子という.結晶内の電子密度分布を自由原子の集まりと仮定すると,

と書ける.ここで,fjj原子の原子散乱因子,nは単位格子中の原子数,abcは単位格子の並進周期,xjyjzj は原子座標である.原子の熱振動の影響は温度因子で考慮される.expの項を幾何学構造因子という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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