内科学 第10版 「橋病変の症候」の解説
橋病変の症候(脳幹障害の特徴)
1)Millard-Gubler症候群(図15-2-7C):
下部橋底部の病変で生じ,髄節性症候として末梢性Ⅶ麻痺(ときにⅥ麻痺も)がみられ,長径路症候として対側上下肢の麻痺が認められる.
2)内側縦束症候群(MLF(medial longitudinal fasciculus)症候群):
MLFが橋下端の傍橋網様体(parapontine reticular formation:PPRF)と中脳の動眼神経核の間で障害されたときに生じる.健側注視の際,患側眼の内転障害と外転した健側眼の単眼性眼振がみられる.患側注視と輻輳は正常である.
3)閉じ込め症候群(locked-in症候群):
橋底部で両側錐体路が強く障害されて生じる.四肢麻痺状態となり,偽性球麻痺により発話もできなくなるが,脳幹被蓋は侵されないので意識は保たれる.意思表出は眼球上転(Ⅲ)と開閉眼でのみ可能である(Ⅶも侵されるため,この開閉眼は上眼瞼挙筋の収縮・弛緩によってなされる).[中野今治]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報