改訂新版 世界大百科事典 「水字」の意味・わかりやすい解説
水字 (みずじ)
水でといたミョウバンで白紙に文字や絵を書き,かわいたのち水につけると,かいた文字や絵が現れてくる遊び。いつごろから流行したか明らかでないが,江戸時代に子どもにもてはやされた。《嬉遊笑覧》には中国の《睽車志(けいしやし)》の次の記事を紹介している。陳増というものの妻が李恒に占ってもらうと,李恒が水に白紙を沈めると,紙の上に2匹の鬼が女を捕えている図が現れた。妻はひじょうに恐れて夫にそのことを告げると,夫は翌日李恒を呼んで同じようなことをした。水の中の紙にはたくさんの鬼が男を責めている図が浮かび,李恒の名さえ記されていたという。その注に,白礬(はくはん)で紙にえがき水中に沈めれば,水と同色のものが現れるともいっている。明治の半ばまで縁日で露天商人などが売っていた。
執筆者:小高 吉三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報