縁日(読み)えんにち

精選版 日本国語大辞典 「縁日」の意味・読み・例文・類語

えん‐にち【縁日】

〘名〙 (「有縁(うえん)の日」「結縁(けちえん)の日」の略) 神仏の、この世に縁(ゆかり)のあるとする日で、その日に参詣して神仏と縁を結ぶと、ふだんにまさる御利益(ごりやく)があるといわれる日。月の三〇日を、五日は水天宮、一八日は観世音、二八日は不動尊などと、それぞれ神仏に配する。中世以降は、参詣者相手の見世物物売り参道に並び、観光遊山の性格が濃くなる。
今昔(1120頃か)一四「今日は十八日観音の御縁日也」

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デジタル大辞泉 「縁日」の意味・読み・例文・類語

えん‐にち【縁日】

ある神仏に特定由緒ある日。この日に参詣さんけいすれば特に御利益があると信じられている。毎月の、5日は水天宮、18日は観世音、28日は不動尊など。有縁うえんの日。結縁けちえんの日。
[類語]祝日祝祭日旗日佳節物日祭日

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「縁日」の意味・わかりやすい解説

縁日
えんにち

神仏の降誕日、示現日、あるいは社堂創建といった、神仏のこの世との有縁(うえん)の日をいう。縁日はすでに平安時代よりあり、『今昔物語集』に「今日は十八日、観音(かんのん)の御縁日也(なり)」とあり、『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』20巻には「十五日、十八日ハ阿弥陀(あみだ)、観音ノ縁日」とある。それぞれの神仏が特定の日に示現してこの日の参詣(さんけい)者を救ってくれるという御利益(ごりやく)信仰によっている。寺院が秘仏とする本尊境内(けいだい)仏を公開して、衆生(しゅじょう)に結縁(けちえん)の機会を与える開帳を、この日1日だけする場合も多い。縁日は会日(えにち)の訛(なま)り、つまり恒例的に催される仏会(ぶつえ)の日が本来であったとする説もある。もとは年1回であったものが、参詣人の増加につれて月ごととなり、さらに鬼子母神(きしもじん)のように8、18、28日となったものもある。縁日には縁起伝説によるものや、さらに忌み日をあてたもの、単に十二支によって数で日を示さないものなどがある。かくて、8日の薬師、10日の金毘羅(こんぴら)、13日の虚空蔵(こくうぞう)、16日の閻魔(えんま)、18日の観音、21日の弘法(こうぼう)大師、24日の地蔵、愛宕(あたご)、25日の天満宮、不動は2、7、28日などと雑多になり、加えて甲子(きのえね)の日は大黒、寅(とら)の日は毘沙門(びしゃもん)、巳(み)の日は弁天、午(うま)の日は稲荷(いなり)とされた。「朝に観音、夕に薬師」などといわれ、これらの縁日ごとに人気の高い神仏へ庶民の群参があったが、単にその日に参詣するだけでなく、地蔵講のように信徒が毎月24日に講を開く形もあった。むしろこのほうが縁日のあり方としては古いとみる考え方もある。関西ではその前夜を縁日とよぶ習いがあるが、関東では普通その当日をいう。縁日は近世以来、レクリエーションの日ともなり、市(いち)が立ち、見せ物小屋が並び、夜店も出て、人々に親しまれた。

[萩原秀三郎]

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世界大百科事典 第2版 「縁日」の意味・わかりやすい解説

えんにち【縁日】

仏教が民衆生活と結びつく段階では,現世利益の観念が強く表出している。そして特別に霊験あらたかな仏菩薩が出現する日に,寺院に詣でて礼拝すれば,かならず功徳を生ずるという信仰が発達した。それが縁日で,縁とは,〈結縁(けちえん)〉または〈有縁(うえん)〉あるいは〈因縁(いんねん)〉のことで,特定の仏菩薩が,特定の日に,特別に霊験あらたかになるように信者の祈願と結びつくのである。たとえば7月10日は観音の四万六千日(しまんろくせんにち)といって,この日に参詣すれば,その功徳は,4万6000回参詣したのと同じになると説かれたりしている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「縁日」の解説

縁日
えんにち

有縁の日・結縁の日・因縁日とも。神仏の示現・降誕・成仏などの由緒にもとづく特定の日。縁日に参詣して祈念すると平生に勝る功徳が生じるとされる。たとえば,5日水天宮,7・16日閻魔(えんま),8・12日薬師,10日金毘羅宮(こんぴらぐう),13日日蓮,15日阿弥陀・妙見,18日観音,21日弘法,24日地蔵,25日天満宮,28日不動,甲子の大黒天,寅の毘沙門天,巳の弁天,午の稲荷,申の帝釈天など。

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百科事典マイペディア 「縁日」の意味・わかりやすい解説

縁日【えんにち】

特定の神仏に縁を結ぶ日。この日その神仏を念ずれば功徳があるという。8,12日の薬師,15日の阿弥陀,16日の閻魔(えんま),18日の観音,21日の大師,24日の地蔵,25日の天神などがあり,この日は市(いち)が立ってにぎわい,門前町に発展したところもある。
→関連項目写絵

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「縁日」の意味・わかりやすい解説

縁日
えんにち

仏教行事。もとは仏教についての由来 (縁) のある日を意味する。民間に広く行われる行事で,仏教に限らず,神仏の降臨,救済,成仏などの由来のある日に,その神仏の供養をし,祭りを行う。

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世界大百科事典内の縁日の言及

【結縁】より

…浄土宗の教義を5通りに分かって伝授する結縁五重(ごじゆう),結縁授戒などがある。縁日は仏と結縁する日という意味であり,あらゆる機会をとらえて人々と仏法の縁を結び,その功徳で信仰に導こうとしたものである。また堂塔の建立に対する布施(ふせ)も結縁という。…

【廟会】より

…中国において,寺院,道観,神祠を総称して廟とよび,そこにまつられる神仏の誕辰を記念して若干日間は一般に開放され,祭礼が行われる。これを廟会とよび,日本の縁日にあたる。その期間は廟の境内や参道に参詣客をあてこんだ露店商人や大道芸人が集まってにぎわい,市民行楽の場所となる。…

【夜店】より

…〈よみせ〉と称する夜間営業は,1725年(享保10)江戸の吉原の遊廓が官の許可を得て,灯火を明るくともして客を迎えたのがはじまりだとされている。夜店が許可になってから,露店商人が夏の夕涼み客を対象にして縁日や祭礼その他の催事のときなどに夜店をだすようになった。江戸時代末期の江戸では縁日に夜店はつき物とされていて,夜店商人の口上をきいて歩くのを楽しみとすることもあった。…

【露天商】より

…街路,広場,空地や,縁日,祭礼などの人出の多いところで,簡単に移動できる台だけの店舗などで,さまざまな商売をする者の総称。露天商が夜になっても出店していたり,夜だけ店をだすことを夜店(よみせ)という。…

※「縁日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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