海上権力史論(読み)かいじょうけんりょくしろん(英語表記)The Influence of Sea Power upon History, 1660-1783

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海上権力史論」の意味・わかりやすい解説

海上権力史論
かいじょうけんりょくしろん
The Influence of Sea Power upon History, 1660-1783

アメリカの海軍戦略家 A.マハン提督の主著の1冊。 1660~1783年にかけて海洋 (軍) 力 sea powerが歴史的に果した役割や,戦術,戦略を分析したもので,1890年にボストンで出版。日本をはじめ諸国海軍に大きな影響を与えた。特にドイツ皇帝ウィルヘルム 2世が読んで深い感銘を受け,第1次世界大戦前のイギリス,ドイツの建艦競争要因となった。明治期には sea powerを海上権力と訳したが,sea powerは「国家が海を利用する能力」ともいうべきもので,『海上権力史論』とは「海洋 (軍) 力の歴史に及ぼした影響」の意である。

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世界大百科事典(旧版)内の海上権力史論の言及

【シーパワー】より

…国家が海洋を利用し海洋を支配するための総合的な力をいい,軍事力以外の要素も含む。アメリカの海軍戦略家A.T.マハンが《海上権力史論The Influence of Sea Power upon History,1660‐1783》(1890)で最初に用いた。マハンは歴史を分析し,海洋に面した国家の繁栄は,商品の生産,海運,植民地の連環する3要素によってもたらされたとし,海軍力は商業の保護のために存在するとした。…

【マハン】より

…85年,新設の海軍大学の海軍戦史・戦術の教官,翌年には同大学校長に就任。そのときの講義に基づき,90年に《海上権力史論》を発表,海上権力の重要性を大英帝国の興隆に範を採りつつ解明し,大海軍主義を力説した。近代的な渡洋戦艦隊をてことする彼の海外膨張論――制海権の掌握,海外根拠地・植民地の獲得,通商の拡張――は,T.ローズベルトやH.C.ロッジなどアメリカの指導者のみならず,イギリス,ドイツ,日本などにも甚大な影響を及ぼした。…

※「海上権力史論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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