国家(読み)こっか(英語表記)state

翻訳|state

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国家
こっか
state

一般に,一定領土と国民と排他的な統治組織とをもつ政治共同体をいい,また一定の地域 (領土) を基礎に固有の統治権によって統治される継続的な公組織的共同社会ともいうことができる。 (1) 広義の固有の国家とは,統治の主体としての統治機構である政府と,統治客体としての人民をともに含んでいるが,政府だけをさして国家と呼ぶこともあり,語源的に国家とは,この狭義の概念に由来している。今日の国家の起源をなすイタリア・ルネサンス期のスタート statoは,統治者およびその属僚から成る実力的統治機構と考えられていた。このように近代ヨーロッパの国家とは,なによりも権力およびその支配機構を意味していたが,やがてそれが主権の観念と結びついて,国民国家 nation stateの機構を準備した。こうして国家とは合法的な物理的強制力の独占を背景として,社会秩序を維持,管理するための支配機構を意味するにいたった。しかし国家の本質をめぐっては,大別して2つの見解が対立している。 (a) 国家を共同目標を達成することによって社会全体に奉仕するものとみる見方と,(b) 国家をその時代の生産手段を所有する支配者の階級利益を擁護するための機関とみなす説である。前者は国家を最高善の実現とみるプラトン以来の国家論の主流であって,近代政治学に継承されている。後者はマルクス主義の立場に代表されている。国家の起源に関する主張には,イデオロギーとしての意味をもつものと,その歴史的説明とがある。前者には神権説や社会契約説が,後者には征服説,搾取説,原始存在説などがある。国家の形態を,通常歴史的観点から,奴隷制を基盤とする古代国家,農奴制に基づく封建制国家,資本主義に依拠した近代国家,および社会主義国家に区分するのはマルクス主義の学説である。 (2) 法学的国家論としては,国家を統治権の主体とみる権利主体説,統治権の客体とみる権利客体説,統治者と被治者との法的関係とみる権利関係説などがある。国家の形態については種々の観点から分類されるが,君主国と共和国,専制国家と立憲国家,単一国家と連邦国家などの区別が基本的なものである。

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デジタル大辞泉の解説

こっ‐か〔コク‐〕【国家】

くに。
一定の領土とそこに居住する人々からなり、統治組織をもつ政治的共同体。または、その組織・制度。主権・領土・人民がその3要素とされる。
[補説] 
2017年に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。2017」キャンペーンでの「国家」への投稿から選ばれた優秀作品。

◆大きな家族。
むとりさん

◆地図上に線でひかれて囲まれた領域。
谷口さん

◆左に傾いても右に傾いても倒れない「やじろべえ」を理想の姿とするもの。
りゅうじさん

◆権力・武力・技術力・法律・その他たくさんの目に見えないもの。壁を築いた大きな家。
詩のぶさん

◆内なる敵には「法」で、外なる敵には「力」で守るべきもの。
ひふみちゃさん

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百科事典マイペディアの解説

国家【こっか】

一定の領土に定住する多数人で構成される団体で,排他的な統治組織をもつもの。一般に,領土・人民主権(統治権)の3要素からなるとされるが,憲法などで国家権力の範囲を定める近代国家においては,国家のみが主権をもつことに反対する解釈もある(多元的国家論)。またマルクス主義では,国家は,支配階級が被支配階級を支配し搾取するための権力機構とみなされる(階級国家観)。歴史的には古代奴隷制国家(奴隷制社会),中世封建国家を経て,絶対主義国家の登場に伴い,国家は国際政治の主役となると同時に,中央集権機構をもつ近代国家として整備される。ブルジョア革命ののちの国民国家では,〈人民〉の大多数は国家の動向に関心をもつ〈国民〉に転化する。この段階での国家は,自由放任主義のもとで国家の機能を最小限にとどめようとする〈夜警国家〉であり,立法部が政治の中心を占めるため〈立法国家〉とも呼ばれる。20世紀に入ると,工業化・都市化の進行による社会の複雑化に伴い,国家が社会の全領域に介入する〈福祉国家〉に移行するが,そこでは行政部の比重が急増して〈行政国家〉の様相を呈する。後者はまた〈積極国家〉とも呼ばれる。こうして今日の大衆国家では,国家は国民の日常生活のすみずみにまで深い関係をもち,他のあらゆる社会集団を圧倒する巨大な機構として確立されている。なお,ナチズムやファシズムのもとでの全体主義的国家においては,国民は国家の利害への全面的従属を迫られる。社会主義革命(プロレタリア革命)を経て成立する社会主義国家は,国家権力が労働者階級のために行使される国家であり,マルクス主義によれば,その発展の結果もたらされる共産主義の段階では,国家は〈死滅する〉とされる。
→関連項目公教育国家承認

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世界大百科事典 第2版の解説

こっか【国家 state】

一定の境界線で区切られた地縁社会に成立する政治組織で,そこに居住する人々に対して排他的な統制を及ぼす統治機構を備えているところにその特徴がある。
[国家の機能]
 一般に政治の機能は,社会内部の異なる利害を調整し,社会の秩序と安定を維持していくことにあるが,こうした機能の達成のためには,社会の組織化が必要である。国家は,政治の機能を遂行するためにつくられた社会の組織にほかならない。社会の構成員が国家という組織からみられるときには,国民あるいは公民と呼ばれる。

こっか【国家 Politeia[ギリシア]】

プラトンの著作(対話編)。全10巻から成り,彼の主著といえる。《饗宴》や《ファイドン》につづいて50歳代に執筆され,完成は前375年ころと推定しうる。前387年にアカデメイアを創設して以来,研究教育活動に最も充実していた時期の所産である。ソクラテスを主役とするこの対話編は〈正義とは何か〉の吟味に始まり(第1巻),そのテーマは全編を一貫しているが,議論の進展につれて,正義のあり方を国家次元に拡大して考察することが提起され,言論による理想国家の構築が試みられることになる(第2~5巻)。

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大辞林 第三版の解説

こっか【国家】

〔易経 繫辞下〕 王家と邦土。くに。
〔state〕 一定の領域に定住する人々が作る政治的共同体。国家の形態・役割は歴史的に異なるが、一般には、近代の国民国家を指し、主権・領土・国民で構成され、統治機関を持つ。 → 近代国家
書名(別項参照)。

こっか【国家】

プラトンの中期対話篇の一。一〇巻。紀元前375年頃成立。魂の正しさを論じ、哲人王による理想国家が語られる。イデアと感覚的経験を論じた「洞窟の比喩」によっても知られる。国家篇。

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精選版 日本国語大辞典の解説

くに‐いえ ‥いへ【国家】

[1] 〘名〙 (「国家」を訓読した語) =こっか(国家)
※書紀(720)仁徳即位前(寛文版訓)「宗廟社稷(クニイヘ)に奉へまつるは重き事なり。僕(やつかれ)は不侫(みつな)うして以称(かな)ふに足らず」

くに‐け【国家】

〘名〙 地方から江戸に出てきた武家。国衆。国武士。
※洒落本・広街一寸間遊(1778)「むかふへきなはるは、ぬしのちかづきのお国家(クニケ)だね。あれは四国の人さ」

こっ‐か コク‥【国家】

〘名〙
① 一定の地域に住む人々を支配、統治する組織。国(くに)。邦国(ほうこく)。邦家(ほうか)。朝廷。おおやけ。
※十七箇条憲法(604)「百姓有礼。国家自治」
※平家(13C前)二「又国家を祈奉る事おろそかならず」 〔易経‐繋辞下〕
② 特に、近代、一定の領土を有し、そこに居住する人々で構成され、一つの統治組織をもつ団体。基本条件として、国民・領土・統治権の三要素を必要とする。その起源については神意説、契約説、実力説などがある。
※和蘭字彙(1855‐58)「国家ノ安全ヲ丹誠シテ祈ル」
③ 特に天皇をさす。
※円覚寺文書‐(弘安六年)(1283)七月一八日・無学祖元書状「誠是国家及大将軍、太守、千年植福之基、万劫作仏之本」
④ 戦国大名の領国。
※朝倉孝景条々(1471‐81)一六条「諸卒を下知し、国家無恙候」
⑤ 国と家。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑥ 江戸時代、一国以上を領有する大名。国持(くにもち)
※葉隠(1716頃)八「其時は御国家の御用不相澄儀と存、御国家に対し言上差控罷在候」

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世界大百科事典内の国家の言及

【愛国心】より

…すなわち愛国心は,本来は愛郷心,郷土愛,あるいは祖国愛であって,地域の固有の生活環境の中で育まれた心性であり,自分の属している生活様式を外から侵害しようとする者が現れた場合,それに対して防御的に対決する〈生活様式への愛〉である。どの時代どの地域にも見られるこの意味の愛国心に対して,19世紀に成立したナショナリズムは,個人の忠誠心を民族国家という抽象的な枠組みに優先的にふりむけることによって成立する政治的な意識と行動である点において区別される。しかしながら世界が国家を単位として編成されるようになると,愛国心も国家目的に動員されたり,逆に国家に抵抗する働きを見せたりすることで,国家との関係を深めた。…

【主権】より

…近代国家の基本的構成要素として,それに帰属させられてきた最高権力の概念。フランスの法学者J.ボーダンがその《国家論》(1576)において最初に用いたとされる。…

【ヨーロッパ】より

…しかしこの数世紀にわたる漸次の変化を具体的内容に即して概説することはとうてい不可能であるから,ここでは〈ヨーロッパ〉を考える上で最も特徴的な,この時期の変化を指摘するにとどめたい。ケルト人ゲルマン人スラブ人民族大移動ラテン民族
[国家のあり方の2類型]
 まずその一つは,政治形態,とりわけ国家のあり方およびその性格の基本的な変質についてである。地中海を内海としたローマ帝国は,いうまでもなく多民族支配の世界帝国であり,類型的にいうならば,政教合致の絶大な権力をもつ皇帝の下,画一的な法典,多数の軍隊,煩瑣な役人制により,租税を通じて人民を掌握支配する制度国家であった。…

【政体】より

…古代ギリシアにおけるポリスの自由の観念自体,オリエントの専制政治との対比によって意識されたといえよう。プラトンは《国家》において哲学者の支配する優秀者支配制を理想的政体とし,現実の諸政体をそれからの逸脱形態として描く。名誉支配制とは知ではなく勝利と名誉を重んじる体制であり,これがさらに堕落すると,少数の富者が支配する寡頭制になる。…

【体育】より


[ヨーロッパ]
 古代ギリシアではオリンピックなどの祭典が全国的な規模で行われ,前5世紀のペルシア戦争でみせたような民族の団結をもたらした。また,ポリス(都市国家)の青少年は読み書き,算数とムシケmousikē(音楽や文芸),ギュムナスティケgymnastikē(体育)の教育を受けたが,そこでも祭典競技の種目が採用された。体育の実習をする場所はパライストラpalaistraといわれ,一般の人がスポーツを行うギュムナシオンgymnasionと併設されることが多かった。…

【プラトン】より

…前期著作:《ラケス》《リュシス》《カルミデス》《エウテュフロン》《ソクラテスの弁明》《クリトン》《エウテュデモス》《プロタゴラス》《ゴルギアス》《メノン》など。中期著作:《饗宴》《ファイドン》《国家》全10巻,《ファイドロス》《パルメニデス》《テアイテトス》(ただし文体研究による区分とは別に,〈イデア論的対話編〉である前4者のみを中期著作と呼び,《パルメニデス》以降を後期著作とする場合もある)。後期著作:《ソフィステス》《ポリティコス(政治家)》《フィレボス》《ティマイオス》《クリティアス》《法律》全13巻,《エピノミス(法律後編)》。…

【ボエティウス】より

…彼はその家系から〈最後のローマ人〉,また著作の及ぼした影響から〈最初のスコラ哲学者〉と称される。彼は,養父であり義父でもあるシンマクスと並ぶ有数の文人政治家であるが,プラトンの《国家》第5巻にみられる〈哲人王〉を終生の理想とし,同じく《国家》第7巻にそれとの関連から提示されている教育課程,すなわち哲学研究の予備教養として数学・幾何・天文・音楽の研鑽をつむべきだとする教育課程を踏襲,それぞれゲラサのニコマコス,エウクレイデス(ユークリッド),プトレマイオスの著書の翻案に基づくこれら4学科の入門書を著した。これらは,後に確立する〈七つの自由学芸〉(自由七科)のうち〈クアドリウィウム〉と称される自然科学を主体とする4教科の基礎となる。…

【ユートピア】より


[ユートピアの系譜]
 ヨーロッパでは古代以来,ユートピア思想と運動の伝統が形成されている。最古のものは,プラトンの対話編《国家》にあらわれる。プラトンはここで,哲人支配者によって厳格に統治される国家を描き,現実のアテナイを暗に批判するとともに,人間と政治の本質が理想的に発現される形式を記述した。…

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