内科学 第10版 「消化管アミロイドーシス」の解説
消化管アミロイドーシス(代謝性疾患)
消化管は全身性アミロイドーシスにおけるアミロイド沈着の好発部位であり,特に十二指腸,小腸および直腸に多く認められる.臨床症状は多彩で,全身倦怠感,体重減少,浮腫,貧血のほかに悪心・嘔吐,食欲不振,下痢,消化管出血,腹部膨満などの消化器症状がみられる.沈着するアミロイド蛋白からおもに以下の4つに分類される.
a.ALアミロイドーシス
従来原発性アミロイドーシスといわれていたもので,免疫グロブリン軽鎖(light chain)由来の(Aκ,Aλ)を前駆体としたAL蛋白(amyloid-light chain)がおもに粘膜筋板,固有筋層および粘膜下層の小血管周囲に沈着する.原発性マクログロブリン血症や多発性骨髄腫に伴うものとアミロイド蛋白が同一である.X線および内視鏡検査では多発する粘膜下腫瘍様隆起と襞の肥厚が特徴的とされる.
b.AAアミロイドーシス
従来続発性アミロイドーシスといわれていたもので,炎症時に反応する急性期蛋白であるSAA(serum amyloid A)蛋白が,おもに粘膜固有層および粘膜下層の小血管周囲に沈着する.結核や膿瘍などの炎症性疾患に続発して起こることが多く,特に近年では関節リウマチに伴うものが最も多いとされる.X線および内視鏡検査では微細顆粒状隆起が多発する粗造な粘膜が特徴的とされる.
c.TTRアミロイドーシス
家族性アミロイドーシスや老人性TTRアミロイドーシスにみられ,トランスサイレチンを前駆体としたATTRが消化管の血管壁に沈着する.特徴的なX線および内視鏡所見に乏しい.
d.透析アミロイドーシス
長期透析例に合併し,β2-ミクログロブリンを前駆物質とするアミロイドが固有筋層および粘膜下層の小血管周囲に沈着する.X線および内視鏡検査では多発びらん,発赤,粘膜下腫瘍様隆起や粗造粘膜など多彩で特徴的な所見には乏しい.[安藤貴文・後藤秀実]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報