翻訳|abscess
化膿性炎症により限局性にうみ(膿)がたまった状態をいう。主として化膿性の細菌(ブドウ球菌,連鎖球菌,肺炎双球菌,髄膜炎菌,リン菌)の感染により生ずる炎症である。初期は白血球のうちの好中球の集まったものであるが,しだいに組織の融解壊死を伴って大きくなる。このときのうみの成分は好中球のみならず壊死に陥った組織や死滅した細菌および滲出液から成っている。膿瘍が持続すると,周囲に肉芽組織から成る繊維性組織ができてしまうので,外科的に排膿しないとなかなか治癒しなくなる。膿瘍のできる場所により,肺膿瘍,肝膿瘍,腎膿瘍,脳膿瘍などと呼ばれる。細菌以外では,原虫のアメーバEntamoeba histolyticaによる肝,肺,脳の膿瘍がある。また結核菌による骨や関節の炎症で壊死巣が融解し,ちょうど化膿菌による膿瘍と似た病巣ができることがある。しかもこの場合,しばしば急性炎症症状を欠いている。結核菌によるこのような病巣をとくに冷膿瘍cold abscessという。
→炎症
執筆者:長島 和郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
炎症の滲出(しんしゅつ)物のなかに白血球の好中球が多量に含まれている場合を化膿(かのう)性炎とよぶが、化膿性炎の病巣が臓器・組織内にびまん性に広がっているものを蜂巣(ほうそう)(蜂窩(ほうか))織炎というのに対して、臓器・組織内に限局しているものを膿瘍と称する。したがって、膿瘍の中心には好中球を含む帯黄灰白色のどろどろした液状滲出物すなわち膿が充満しており、これを取り出せば空洞状の物質欠損となる。また膿瘍周囲の肉芽組織を膿瘍膜とよび、膿瘍の体表面および腔(くう)との連絡路を瘻管(ろうかん)という。さらに膿瘍が悪化すると、血行性に生じた膿血症をおこし、全身に膿瘍の小病巣を多発することになる。なお、冷膿瘍という用語があるが、これは結核病巣の壊死(えし)物質のたまったもののことで、発熱、発赤などの急性炎症症状を欠いているのでこのようによばれている。とくに骨の結核であるカリエスの場合、冷膿瘍が軟部組織の間を下にくだった場所にみられることが多く、流注膿瘍といわれる。
[渡辺 裕]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(3)潰瘍ulcer 皮膚の欠損が真皮にまで及ぶもので,治るときには欠損部が肉芽組織により埋められ瘢痕を残す。(4)膿瘍abscess 真皮内あるいは皮下に膿がたまった状態。大型のものは表面から触れると波動を感ずる。…
…(3)潰瘍ulcer 皮膚の欠損が真皮にまで及ぶもので,治るときには欠損部が肉芽組織により埋められ瘢痕を残す。(4)膿瘍abscess 真皮内あるいは皮下に膿がたまった状態。大型のものは表面から触れると波動を感ずる。…
※「膿瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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