指や膝の関節内で炎症が起き、骨に痛みや変形が生じる疾患。貧血や微熱が伴うこともあり、初期には関節の腫れやこわばりが現れる。重症化すると軟骨や骨が破壊され、日常生活の動作に支障が出る。発症には遺伝や細菌感染などが関わっているとされるが、詳しい原因は不明。薬剤による治療などがある。決め手となる予防法は開発されていない。
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
「リウマチ」とは、もともとギリシア語の「流れる」という意味をもつ言葉で、筋肉や関節に痛みと炎症を引き起こす病気の毒素が、体のあちこちに流れていって引き起こされると考えられていたために名づけられたものです。
現在「リウマチ」という言葉は、広い意味で「リウマチ性疾患」を指している場合と、狭い意味で「関節リウマチ」を指している場合とに使われています。
「リウマチ性疾患」とは、関節、筋肉、骨、
関節リウマチは、関節の内面をおおっている
残念ながらまだ不明というのが現状ですが、この病気にかかりやすい遺伝的な素質があって、何らかの環境因子が引き金となって発症すると考えられています。その環境因子の中では、喫煙や歯周病が関節リウマチの発症や症状の悪化に関係しているということが最近の報告で明らかとなっています。ただ、病気になる素質はある程度遺伝しますが、実際に病気が遺伝する確率は非常に低いと考えてよいと思います。
この病気のはじまりは、免疫の異常で起こるといわれています。免疫とは、本来は細菌やウイルスなどの外敵を排除するシステムですが、この異常によって自分の体の一部を外敵と錯覚して排除しようとしてしまうわけです。この免疫の異常が滑膜炎を引き起こし、関節を壊していくわけですが、その中心的な役割を演じているのが、サイトカインという物質であることが最近の研究でわかってきました。
サイトカインとは、もともと免疫に関わる物質で、異物を排除して体を守るはたらきをしていますが、関節リウマチではある種のサイトカイン(TNF
関節リウマチの主な症状は、朝のこわばりと関節の痛み・はれ(関節炎)です。発熱、全身倦怠感、体重減少、食欲不振といった全身症状を伴うこともあります。
朝のこわばりは、朝起きた時、何となく手の指が硬くて曲げにくい、手の指がはれぼったい感じがするという症状で、同じような症状が足の指や四肢全体にみられることもあります。この症状は、更年期の人や他の病気でも軽度ならみられることもありますが、関節リウマチでは、通常30分以上から数時間と炎症の度合いに応じて長時間続くことが特徴です。
関節炎は、最初は手首や指の関節に起こる傾向があります。指の付け根とその次にある関節によく起こり、一番先端の関節にはあまりみられません。逆に、一番先端の関節だけに痛みやはれがある場合は、ほとんどが変形性関節症(ヘバーデン
進行すれば大きな関節に及び、背骨やあごを含むほぼ全身の関節に現れることもあります。また、両側の関節に対称的に出てくるのも特徴です。
関節炎が長期間続くと、軟骨・骨が少しずつ壊れていき、関節に変形や
また、関節以外の合併症が現れることもあります。たとえば、肘、後頭部に出現する
関節リウマチでは、発病して2年以内の早期に軟骨・骨が壊れていくといわれています。いったん傷んだ関節を元にもどすことはほとんど不可能なので、軟骨・骨が傷む前の関節炎の段階で、なるべく早く診断して治療することが大切です。
ただ、関節に痛みが出る病気は関節リウマチ以外にもたくさんあり、関節リウマチであっても早い時期にはなかなか診断がつかない場合もよくあります。リウマトイド因子という血液検査も、患者さんの80~90%で陽性となりよく行われますが、関節リウマチ以外の人や健康な人でも陽性となることもあり、これだけでは確定診断はできません。最近、抗CCP抗体という検査が可能となって、これが陽性に出れば、80~90%の確率で関節リウマチと診断できるといわれています。また、超音波検査やMRIでは、一般的な診察やX線検査ではみられないリウマチの変化がみられることがあります。
最近の関節リウマチの早期診断は、欧州リウマチ学会の「関節リウマチ分類基準」(2010年)に基づいて行われています。まず、1カ所以上の関節のはれがあり、はれまたは痛みがある関節の数、血液検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体)、関節炎の持続期間、炎症反応(CRP、血沈)を組み合わせることによって関節リウマチと診断されます。
関節リウマチと診断されれば、関節炎の状態、薬の効果、薬の副作用や合併症のチェックのための血液検査を行います。関節炎の状態は、赤血球沈降速度、C反応性蛋白(CRP)、MMP3などで判定します。また、X線検査や超音波検査、MRIなどによる画像検査で関節炎や関節破壊の状態を把握します。
治療の原則は、①薬物療法、②リハビリテーション、③手術療法、④ケアの四本柱を、患者さんの病気の重症度や日常生活での不自由度などを総合的に判断して行うことです。
薬物療法では、消炎鎮痛薬、ステロイド薬、抗リウマチ薬を患者さんの病気の状態に応じて使っていきます。抗リウマチ薬はその中心となるもので、発症早期(3カ月以内)に開始することが推奨されており、特にメトトレキサートは国際的な標準的治療薬として使用されています。ただ、人により効果も違い、またいろいろな副作用もあるため、その人にあった薬の種類や用量を決めていく必要があります。服用している薬の効果やその副作用について十分に説明を受け、自分でも注意することが大事です。ステロイド薬は炎症を抑える効果が大きく、炎症がコントロールできない場合に使うことがあります。ただ、長期に使用すると感染症や骨粗鬆症などの副作用が出現するために、なるべく短期間に減量・中止する必要があります。
最近、新しい抗リウマチ薬である生物学的製剤が使用できるようになり、関節リウマチの治療が格段に向上しました。生物学的製剤には、TNFαやIL6などのサイトカインのはたらきを妨げる薬や、免疫を司るT細胞のはたらきを抑える薬があります。点滴注射や皮下注射(自己注射も可能)で使用しますが、投与方法や投与間隔は薬の種類によって異なります。最近さらに、毎日服用する飲み薬で、JAK(ジャック)阻害薬という薬が使用可能となりました。これは、細胞の中でサイトカインによる信号の伝達をブロックすることで炎症や関節の破壊を抑える効果があり、生物学的製剤とほぼ同等の効果があるといわれています。
これらの薬は、抗リウマチ薬で効果が不十分であった患者さんに使われますが、効果は非常に強力で、患者さんの70~80%に効果があるといわれています。また、早期から効果的に使えば、ほとんどリウマチが治った状態:寛解(痛み・はれがない、血液検査正常、X線検査で進行なし)を維持することも可能です。ただ、この薬が免疫機能を抑えることになるため、感染症やその他の副作用に対する注意が必要であることや、値段が高いことなどの問題点もあります。
関節リウマチの薬物治療の原則は、現在ある関節の痛みやはれを抑えるだけでなく、将来起こりうる関節の破壊や変形の進行を予防して予後を改善することにあります。そのためには、リウマチが非常に軽いかほとんどない状態を目指して、3カ月か少なくとも6カ月以内には治療効果を見直して必要なら変更することが重要です。
関節の機能(関節の動く範囲と筋力)を保つためにリハビリテーションも必要で、そのための「リウマチ体操」というプログラムもあります。また、変形の予防や関節保護のためには、装具が必要です。
手術は、薬物療法とリハビリテーションによる治療にもかかわらず関節の障害が残り、手術により関節の機能や日常生活の改善が期待できる場合に行われます。具体的には、人工関節置換術、滑膜切除術、手指の腱断裂の手術、
整形外科やリウマチ科を「関節リウマチの疑い」で受診される患者さんで、本当に関節リウマチと診断される人はそれほど多くはありませんが、やはり朝のこわばりや両方の指の痛み・はれに気づいたら、なるべく早く専門医に相談したほうがよいでしょう。
関節リウマチは、原因不明の病気で、完全に治すことが難しいことには今も変わりがありません。しかしながら、最近のリウマチの治療は以前とは比べ物にならないほどに進歩しています。大多数の患者さんは日常生活もあまり支障なく過ごされており、手術を必要とする患者さんも少しずつですが、減ってきているといわれています。もし関節リウマチと診断されてもあまり悲観的に考えずに、病気のことや最新の治療法についての情報を得て、積極的に取り組んでいく心構えが大切です。
田中 浩
関節リウマチは、70~100万人の患者数を数え、30~50代の女性に好発します。ひとつの関節にとどまらず、左右対称性に全身の関節にこわばり、痛み、はれを生じ、進行すると関節が壊れます。
しかし、微熱、食欲減退、全身
関節の炎症が持続すると、関節の破壊を引き起こし、関節の変形や
関節リウマチの原因は不明ですが、遺伝や感染する病気ではなく、免疫異常が関係しています。
「免疫」というのは、体に外から異物が入ってきた際に、それを見分けて攻撃し、体を守るシステムですが、「自己免疫」の病気では、このシステムに狂いが生じ、自分自身の体の一部を攻撃します。免疫の司令塔がリンパ球ですが、リウマチでも自分自身を攻撃するリンパ球が病気を引き起こします。
そもそも、「リウマ」とはラテン語で「流れる」という意味ですが、その理由は長い間不明でした。現在、自分自身を攻撃するリンパ球が、全身の関節や臓器に流れていき、あちこちの関節
全身の関節にこわばり、痛み、はれを生じます。「朝のこわばり」はリウマチ特有の症状で、起床時に手指などの関節がこわばって動かしにくく、ぎこちない感じを自覚し、温めたり動かすと数分~数時間で消えていきます。
こわばり感に引き続いて関節症状が現れます。関節痛は重要な症状ですが、「痛い」だけではなく、関節の
また、微熱、食欲減退、全身倦怠感などの全身症状や、前腕伸側などの皮下結節、目や口の乾き、乾いた
関節の炎症は、発症の早期から骨・軟骨に広がり、関節の破壊がどんどん進行すると運動が制限され、元に戻らなくなります。手や足の変形は食事や歩行などの日常生活動作を損ないます。
関節を侵す病気はたくさんあり、関節リウマチの診断は慎重に行うべきですが、同時に、なるべく発症の早期に診断することも重要です。患者にとって関節が壊れて普通の生活ができなくなることが最も不安であり、壊れる前に治療を開始しなくてはいけません。2010年にアメリカと欧州のリウマチ学会が新しい分類基準を作りました。
この基準は、慢性化して関節を壊してしまう関節炎を関節リウマチと定義し、関節リウマチをそうではない関節炎から分類する目的で作られました。この基準では、まず他の病気でないことを鑑別して、次に点数化します。医師が診て関節で炎症があることを確認すれば最高5点、CCP 抗体や血清リウマトイド因子が陽性ならば最高3点、催病期間(症状の持続期間)が6 週間以上で1点、赤沈やCRP が陽性ならば1点、合計10点満点で6点以上であればリウマチと分類します。そのうえで、医師が最終的に診断して、関節が壊れる前に治療を始めます。
すなわち、「痛い」では診断に至らず、医師が関節をさわって、腫脹や関節液貯留などを確認しないと診断できないしくみになっています。リウマトイド因子が陽性だからリウマチであると即決するのは誤りで、一部の健常人や肝臓病患者でも陽性になります。逆に、リウマチ患者の約2割は反応陰性で、陰性だからといって本症を否定はできません。さらに、疲れやすさ、目や口の乾き、乾いた咳などのリウマチ特有の関節外症状は、診断の補助となります。
関節リウマチでは、関節局所や一時しのぎの治療ではなく、全身的な、長期的に計画された治療が必要です。薬物療法が中心となります。
関節リウマチは免疫の異常で発症するため、免疫の異常を抑制し、病気を制御する必要があり、そのために免疫抑制薬が使われます。関節リウマチに対する根本的な治療薬として用いる免疫抑制薬は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)と呼ばれます。抗リウマチ薬は、内服可能な合成抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)、点滴や注射で用いる生物学的製剤で作ったバイオ抗リウマチ薬に分けられます。
一方、抗炎症薬は、疼痛や腫脹の緩和を目標とした補助療法として使用します。シクロオキシゲナーゼⅡ選択性があり、消化管、腎障害が比較的少ないセレコキシブ(セレコックス)を使用します。最強の抗炎症薬は副腎皮質ステロイド薬(プレドニンなど)ですが、
世界で最も標準的に使われている合成抗リウマチ薬は、メトトレキサート(リウマトレックス、メトレートなど)です。関節リウマチと診断されれば、禁忌事項がなければまずメトトレキサートで速やかに治療を開始するべきだと推奨されています。メトトレキサートは、日本では1週間単位の投与量として16㎎、8カプセル(錠)まで使うことができ、十分量を使用すれば最も効果が高い合成抗リウマチ薬とされます。一方、他の薬剤と同様に副作用にも注意すべきです。1日あけて副作用止めの葉酸(フォリアミン)を必ず飲んでいただきます。そうすれば大部分の副作用は抑えられるはずですが、特に高齢者では、肝障害、腎障害、骨髄障害、肺障害などの副作用が出ることがあります。したがって、肝障害や腎障害がある人、授乳婦、妊婦に使うわけにいきません。また、メトトレキサートが使用できない人には、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)やレフルノミド(アラバ)などの合成抗リウマチ薬が使われることになります。
メトトレキサートを、週3カプセル(錠)・3カ月以上服用しても効果が不十分な場合、または6カ月服用しても寛解に導入できなかった場合には、「生物学的製剤」が使用されます。私たちの体のなかにある蛋白質を使って作るバイオ医薬品です。比較的安全なうえ、病気の「主犯」をピンポイント攻撃します。主犯のサイトカインであるTNF
関節リウマチに用いるバイオ医薬品には、TNFを標的とするインフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンポニー)、セルトリズマブ(シムジア)、IL6を標的とするトシリズマブ(アクテムラ)、サリルマブ(ケブザラ)、T細胞を標的とするアバタセプト(オレンシア)があります。また、インフリキシマブについては、薬価が約3割安いバイオシミラー(バイオ後続品)も登場しています(2018年3月現在)。その他、多くの薬剤が治験(効果の検定)段階にあります。
これらの抗サイトカイン療法は、抗リウマチ薬であるメトトレキサートと併用すると、半分近くの人は痛みもはれもなくなり、また、炎症反応などの検査成績も正常化します(「臨床的寛解」といいます)。また、関節の破壊の進行がほぼ完全に抑え込まれ、早いうちから使用すれば身体機能が回復して、普通の人と同じように日常生活が送れるまでに改善します。なお、米国では、脳卒中や心筋梗塞の発症率も下がり、寿命が延びたという報告もあります。
さらに、内服薬なのに、生物学的製剤と同じくらい、あるいはそれ以上に効果のある合成抗リウマチ薬としてトファシチニブ(ゼルヤンツ)とバリシチニブ(オルミエント)が発売されました。関節リウマチの病態に関わる多くのサイトカインのシグナルを阻害する薬剤として、期待されています。現在、感染症や悪性腫瘍などの長期安全性に関して市販後調査中です。
一方、これらの新しい治療薬にも副作用があります。しかし、これまでの膨大な報告に基づいて作成された治療指針に沿って適正に使用すれば、深刻な問題はほとんどないはずです。たとえば、病歴、結核反応試験、レントゲンやCT所見などから、結核の可能性があれば抗結核薬の予防投与が推奨されます。また、一番多い重篤な副作用のひとつが細菌性肺炎ですが、ステロイドを使っている人、肺疾患の既往のある人、年齢の高い人には肺炎が起こりやすいことがわかりました。このような人には、肺炎球菌ワクチンの接種が強く勧められます。インフルエンザワクチンも是非とも必要です。したがって、副作用を的確に管理することができる医師や施設で治療することが大事です。
朝起床時のこわばり感の持続、および、左右対称性に多くの関節にはれが現れ、1カ月以上持続すれば、早急にリウマチ専門医を訪れて、適切な診断を受ける必要があります。また、リウマチは全身の病気なので、関節だけでなく、全身を内科的に診察することが必要です。
診断されたら、なるべく早く適切な薬物治療を開始することがその後の鍵を握ります。薬物治療を必要とする場合には、リウマチ・膠原病を専門とする内科を受診してください。手術やリハビリが必要な場合には、リウマチを専門とする整形外科を受診してください。
日常生活では、ストレス、不要な薬剤、感染症など、悪化の要因を避け、バランスのとれた栄養を補給し、体と心の安静を保ってください。適度の運動やリウマチ体操、日常品の工夫や自助具の活用、家族の協力も大切です。病気や薬剤に関する正しい情報を得ることも大変重要です。
田中 良哉
一般に女性に多いのですが、高齢者では性差は縮まります。高齢者では一般に疾患活動性に対する予後がよい、リウマチ因子陽性率が低い、リウマチ性多発筋痛症のような発症をみることがある、などの特徴があります。これとは別に、高齢者における関節リウマチ(RA)の病像には
関節リウマチとしての経過が長い例で、時に発熱や体重減少などの全身症状が強く、
高齢者の関節リウマチの治療には、以下のような特徴、注意点があります。
①高齢発症の関節リウマチでは、病初期における疾患活動性が高い場合でも、疾患の予後は比較的良好で、治療により
②治療効果が部分寛解にとどまったとしても、経過のなかで関節機能障害によって日常生活動作の大きな低下を来すに至るのは、一般に発症してから10年前後なので、治療にあたっては患者さんの平均余命を考慮する必要がある。
③長期の罹病をへて高齢に至った患者さんの場合、すでにさまざまな治療が試みられており、高い活動性が持続している場合でも、新たな治療で大きな効果を期待することはできない。
④薬剤の副作用発現の危険性が高いことなどを念頭に置いて薬剤を選択する。
⑤高齢者ではとくに骨粗鬆症の予防・治療に留意する。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
多発性関節炎を主徴とし、進行すれば関節の亜脱臼(だっきゅう)や強直なども生じ、同時に種々の全身症状も伴う疾患。日本では1962年(昭和37)「慢性関節リウマチ」と訳され、呼称として長く用いられたが、その後、病態解明が進み、「慢性」の語が適当でないとして2002年(平成14)診断名を「関節リウマチ」と変更した。
[高橋昭三]
原因は明らかでないが、免疫グロブリンの一つであるIgGに対する自己抗体であるリウマチ因子が高率(約80%)にみいだされ、そのほか種々の免疫的異常が認められるので、自己免疫疾患の一つと考えられている。免疫異常のきっかけとなるものとして古くから感染が想定されているが、特定の感染微生物は発見されていない。患者の血縁者にはこの病気の頻度が高く、遺伝的素因が発病に関与していると考えられる。肉体的・精神的な疲労、住居の湿潤、寒冷、感染、外傷などが発病の誘因としてあげられる。女性に多く(男性の3、4倍)、とくに30~50歳代によくみられる。
[高橋昭三]
一般に徐々に発病するが、一部には発熱を伴い急性に発症するものもある。関節症状が現れる前に、疲れやすさ、食欲不振、手足のしびれ感、一過性の筋肉や関節の痛み・こわばりなどの前駆症状が認められることもある。関節炎は本症に必発であり、多発性、左右対称性、慢性かつ進行性であるのが特徴である。初発関節は、欧米では手指、手、足、足趾(そくし)(足指)関節が多いとされているが、日本では生活様式の関係か、膝(しつ)関節から始まることも少なくない。関節の炎症は滑膜の炎症から始まり、しだいに関節軟骨や骨も破壊されるようになる。したがって初期には滑膜の増殖、関節包(嚢(のう))の肥厚、関節液の貯留により腫脹(しゅちょう)や熱感を生ずるが、X線検査では関節にほとんど変化は認められない。
本症では、指先から数えて第二の関節(近位指節関節)と第三の関節(中手指節関節)が侵されやすいが、第一の関節(遠位指節関節)だけが最初から侵されることはない。遠位指節関節を侵しやすいのは、変形性関節症である。近位指節関節の腫脹は、特有な紡錘形を示す。病変が進行すると、関節の破壊や筋の萎縮(いしゅく)、拘縮(こうしゅく)に、腱(けん)や靭帯(じんたい)の変位、断裂などが加わり、本症に特有な種々の変形が現れる。この関節症状以外によくみられるのは、疲れやすさ、食欲不振、体重減少、貧血などである。微熱が認められることもある。頻度は少ないが本症に特有なものに皮下結節がある。これは皮下のぐりぐりした塊で、関節付近の伸側にできやすい。普通、圧痛はない。
[高橋昭三]
次に述べる11項目の臨床症状と検査項目の組合せからなる診断と、その条件を満たしていても本症でないこともあるので、診断から除外する項目を設けたアメリカ・リウマチ協会の診断基準が用いられる。おもな除外項目は、本症以外の膠原(こうげん)病や痛風、感染性関節炎などの特徴とされる症状や検査所見である。
(1)朝のこわばり、すなわち朝の覚醒(かくせい)時に関節を動かすときに感ずる動かしにくい「こわばり感」をいう。
(2)少なくとも一つの関節の運動痛か圧痛がある。
(3)少なくとも一つの関節の腫脹がある。
(4)少なくとももう一つ他の関節にも腫脹がある。
(5)関節腫脹に左右対称性がみられる。
(6)皮下結節がある。
(7)関節の典型的X線写真像が得られる。
(8)リウマチ因子が認められる。
(9)関節液ムチンの減少がみられる。
(10)関節滑膜に特徴的な組織学的変化が認められる。
(11)皮下結節に特徴的な組織学的変化が認められる。
以上のうち、5項目以上があり除外項目がなければ、関節リウマチと診断してよいとされる。
[高橋昭三]
約35%は1、2年の経過で治癒ないし軽快し、約15%は進行がとどまることなく高度の身体障害者となり、両者の中間で増悪と寛解を繰り返しながら全体としてはすこしずつ悪化するものが約50%である。生命の予後は悪くなく、本症自体で死亡するものは悪性関節リウマチを除けば少ない。
[高橋昭三]
適度の安静と適度の運動(関節の伸展・屈曲を最大限に行う)ならびにビタミン、ミネラル、タンパク質の豊富な食事などからなる基礎療法に加え、消炎・鎮痛作用のある非ステロイド性抗炎症剤を用いるのが原則である。これで症状がコントロールできない場合には金剤やD-ペニシラミンが用いられる。これでもだめな場合には免疫抑制剤が使われることもある。ステロイド剤はやむをえない場合のみ少量(できるだけ1日1錠まで)を使用する。炎症症状が2、3の関節に限局して強いときには、ステロイド剤の関節注入も行われる。関節機能障害の予防および治療には、各種の理学療法を含めたリハビリテーションも必要である。なお、関節機能障害が高度な場合には、機能回復のため関節形成術(人工関節)など種々の手術が行われる。
[高橋昭三]
本症に関連した2、3のおもな疾患について簡単に述べる。
[高橋昭三]
関節リウマチに血管炎症状を伴ったものをいい、特定疾患(難病)に指定されている。高熱をはじめとして全身のいろいろな臓器障害が現れる。すなわち、多発性神経炎、皮膚の梗塞(こうそく)または潰瘍(かいよう)、指趾壊疽(ししえそ)、上強膜炎、滲出(しんしゅつ)性胸膜炎、心嚢(しんのう)炎、心筋炎、肺臓炎などで、治療にはステロイド剤、D-ペニシラミンが用いられる。
[高橋昭三]
小児期(15歳以下)に発症した関節リウマチをいうが、成人のものと同一疾患か否かは不明であり、少なくとも臨床面からは異なるところが多い。発病時の症状から全身型(急性熱性型)、多関節型、少関節型(または単関節型)の3型に分けられるが、全身型はスティル病ともよばれている。
[高橋昭三]
関節リウマチに脾腫(ひしゅ)と白血球減少を伴うものをいう。
[高橋昭三]
リウマチ性疾患の一つで,関節炎があちこちの関節におこり,進行して慢性化するため,慢性関節リウマチrheumatoid arthritis,または多発性関節リウマチとも呼ばれる。運動器の中心である関節のほか,約25%の患者には,皮下組織,腱鞘,筋肉,肺,脾臓,リンパ節,心臓,血管,眼など,関節外の組織にもリウマチ性の炎症がみられる。したがって全身病と考えられている。しかし,あくまでも関節炎がこの病気の主要な症状である。
原因は不明であるが,ウイルス,細菌などによる感染,先天性素因や内分泌障害が有力視されている。免疫学的研究によると,慢性関節リウマチにかかっている人の血清中の変性免疫グロブリンが抗原となって,抗免疫グロブリン抗体ができることが明らかにされている。これは主としてIgM抗体であるが,リウマチ因子と呼ばれている。このリウマチ因子が補体と結合して免疫複合体を形成し,関節炎の引金になり,さらに関節の軟骨に沈着するため慢性関節炎が持続するといわれる。なぜこのようなリウマチ因子がつくられるかは明らかにされていないが,約75%のリウマチ患者のほか正常人の血清にもみられる場合がある。
慢性関節リウマチの関節炎は,関節包の内張りにあたる滑膜に初発し,しだいに関節液がたまる。ここでもリウマチ因子が産生されて慢性化の原因となる。進行すると軟骨が侵食されて破壊される。このため骨が露出すると関節はぐらぐらになって安定性を失う。やがて関節運動が障害されて不動となって相対する関節端の骨が癒合してくる。これを骨性強直と呼んでいる。
中年以降の40~50歳の女性に多い。大多数の人では,両側の手指で近位指節間関節に紡錘状のはれと痛みがおこり,炎症は中手指関節および手関節に進む。続いて大関節では,ひざ,ひじ,足関節にはれと痛みがおこる。一度に複数の関節炎がおこるのが特徴である。慢性化したものでは,関節の運動障害が強くなり,特徴的なリウマチ変形をおこす。すなわち,上肢では,ひじが伸びなくなり,手指はボタン穴swan neck変形をおこし,物を握ったりすることが不自由になる。下肢では,関節が変形したり不安定になるため歩行しがたい。足指の変形で〈まめ〉や〈たこ〉ができて履物がはけなくなる。そのほか,股関節,肩関節,頸椎にも関節炎がみられるが,全体の10%以下の罹患率である。
診断にはよくアメリカ・リウマチ協会の基準が利用されている。これは次の11項目からなっている。
(1)少なくとも6週間〈朝のこわばり〉が続く。(2)少なくとも6週間〈1関節以上の関節痛または圧痛〉が続く。(3)少なくとも6週間〈1関節の腫張〉が続く。(4)少なくとも3ヵ月以内に〈他の関節腫張〉が現れる。(5)少なくとも6週間〈両側性または対称性に中手指関節,近位指節間関節,中足趾節関節腫張〉が続く。(6)皮下結節の存在。(7)レントゲン写真での骨の脱灰像。(8)リウマチ因子の陽性。(9)滑液(関節液)ムチン沈殿物の減少。(10)滑膜炎の特徴的病理所見。(11)リウマチ結節の特徴的組織変化。このうち,7項目以上あればまちがいなく慢性関節リウマチであり,5項目以上であれば確定的とされる。3項目以下では慢性関節リウマチとはいえず,他の関節炎と鑑別せねばならない。
関節の痛みが強く,腫張のある場合には安静が必要である。しかし,痛みや腫張が軽減すればできるだけ臥床を避け,運動機能の障害を予防する。温熱療法によって関節の鎮痛と筋緊張を和らげるが,これにはパラフィン浴,鉱泥,温泉浴および家庭でのホットパックがある。運動療法ではリウマチ体操によって1日数回全関節の全運動を行う。
原因不明ではあるが,関節炎の発症メカニズム(仕組み)が明確になってきたため,薬物治療によって症状を緩和させ,運動障害や変形も防止することができるようになってきたので,日常生活や職業復帰も可能である。多くの抗リウマチ薬および抗炎症剤がある。昔からのアスピリン製剤は,副作用が少なく今でも長期間の基礎療法として投薬されている。現在のリウマチ治療薬のうち,欧米や日本で最も副作用が少なくよく使用されるものは金製剤である。1~2週間隔で1回量10~50mgを症状に応じて注射する。効果の出るまで3ヵ月間を要するが,関節炎の再燃,反復を抑制するのに安定した効果がある。副腎皮質ホルモン製剤は強力な抗炎症剤ではあるが,副作用のため,重症のリウマチの治療にのみ使用される。長期間連用したり,大量に使用することは避けるが,関節炎が他の抗リウマチ薬を投与しても2~3の関節の痛みと腫張がなくならない場合には局所用の関節腔内注射が行われる。そのほか,インドメタシンの内服と座薬が症状のコントロールに効果があり,副作用が少ない。
整形外科的治療は,局所関節の変形と運動障害に対して行われる。保存的療法として,変形予防の装具,特殊靴,車いすなどが使用される。薬物治療を続けても関節の痛みと腫張が6ヵ月以上続く場合,関節包の内層である滑膜を切除すれば関節炎は消退するので,ときに行われる。もしも変形と運動障害がおこって固定したものになると,保存的治療では効果がない。
関節の破壊が強くなると痛みはいっそう強くなり,日常生活に著しい支障がおこってくる。この場合には関節の再建手術として人工関節置換術が優れている。股関節と膝関節に最もよく行われる。この手術後には痛みは100%近く消える。関節の運動範囲も正常の2/3まで回復するのが普通である。
慢性関節リウマチにかかると,その20%は障害を残さず治癒するが,約半数の患者の関節炎は進行し変形を生じ,10%の患者は将来身体障害者になるといわれている。しかし,原因不明でも関節炎の組立機構が明らかになってきたので,この病気で死亡することはない。関節の働きを保つためには,症状の進行を抑制し関節の破壊を予防し,炎症の鎮静化をまつことが必要である。
→リウマチ
執筆者:広畑 和志
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(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
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