デジタル大辞泉
「浮腫」の意味・読み・例文・類語
むくみ【浮=腫】
むくむこと。また、むくんだもの。ふしゅ。「全身に浮腫がくる」
ふ‐しゅ【浮腫】
皮下組織内に、組織間液が大量にたまった状態。押すとへこむ。むくみ。
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むくみ【浮腫】
- 〘 名詞 〙 むくむこと。からだの内部に組織液あるいはリンパ液がたまり、はれたような感じになる状態。浮腫(ふしゅ)。〔書言字考節用集(1717)〕
- [初出の実例]「もう顔に水腫(ムクミ)が来てるやうだわ」(出典:縮図(1941)〈徳田秋声〉時の流れ)
ふ‐しゅ【浮腫】
- 〘 名詞 〙 水分が体内に過剰に蓄積した状態。心臓病・腎臓病・血中蛋白質の減少時に全身的に見られるほか、循環障害によって部分的に認められることもある。むくみ。→水腫。〔病論俗解集(1639)〕 〔後漢書‐梁皇后紀〕
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浮腫(症候学)
病態生理
1)浮腫の発症要因:
体液のおよそ1/3は細胞外液に分布している.細胞外液の1/4は血管内に血漿として,3/4は間質液として分布している.毛細血管と間質では常に体液が行き来している.間質液の量は,毛細血管と間質との静水圧差および膠質浸透圧の差による移動,リンパ系による流出,そして毛細血管壁の透過性により決定される(図2-18-1)(Taylor, 1981).定常状態では間質液の量は動脈側での毛細血管からの流入,静脈側での毛細血管への流出,そしてリンパからの体循環への灌流によって一定に保たれている.このため浮腫発症の機序は基本的には以下の4つである.
a)毛細血管と間質の静水圧差の変動
静脈の閉塞や細胞外液量増加に伴う静脈圧の上昇は,毛細血管静水圧を増加し浮腫を生じる.静脈炎,静脈血栓症,骨盤腫瘍,そしてうっ血性心不全などの全身的なNa貯留による細胞外液量増加時における浮腫の要因である.
b)毛細血管と間質の膠質浸透圧差の変動
血漿アルブミン濃度の低下による毛細血管の膠質浸透圧低下は浮腫の要因となる.肝硬変,ネフローゼ症候群,栄養不良時などでみられる.一方,甲状腺機能低下症のように間質組織にムコ蛋白やアルブミンが蓄積し間質膠質浸透圧が上昇する場合にも浮腫を生じる.
c)リンパ管の閉塞
手術によるリンパ節廓清やフィラリアなどによるリンパ管の閉塞は浮腫の要因となる.
d)毛細血管壁障害による透過性の亢進
火傷,蜂巣炎,じんま疹など,種々の原因による血管透過性の亢進は局所の浮腫を生じる.
鑑別診断
1)浮腫へのアプローチ:
患者自身が浮腫(むくみ)に気づくこともあるが,下肢がだるい,まぶたが重い,はれぼったい,物が握りにくい,指輪を外しにくい,靴が履けないなど多彩な訴えをすることもある.浮腫を呈する疾患は多数ある(表2-18-1).このため,浮腫が疑われたときにはこれらの疾患を念頭において,病歴の聴取,身体診察,そして診断のために適切な検査を選択する.
2)病歴聴取:
浮腫の発症時期,そして一過性か,反復性か,持続性かを聴取する.心疾患,肝疾患,腎疾患,内分泌疾患の既往や手術歴も尋ねる.また,薬剤が原因となることも多く,薬剤服用歴や薬物や食品に対するアレルギー歴の有無の聴取も大切である.
3)身体診察:
a)浮腫の確認と程度の評価:浮腫は組織が疎で組織圧が低く,重力の関係で静水圧のかかりやすい部位に生じやすい.まず,全身を観察し浮腫の可能性を把握し,浮腫のありそうな部位を圧迫した感触により浮腫の有無を判断する.次に浮腫のみられる部位を最低5秒間以上しっかりと圧迫し,むくみの有無と圧痕の程度により浮腫を評価する.下腿では脛骨粗面表面や両側の足背または内顆後方で診察する.浮腫の程度は圧痕の程度により+1~+4に評価される. 圧痕の有無は貯留している細胞外液中の蛋白濃度に依存する.蛋白濃度の低い液体の貯留(低アルブミン血症やうっ血性心不全)では圧痕ができやすく,また戻るのも速い.特に低蛋白血症による浮腫(血清アルブミン<3.0 g/dL)では,1~2秒の圧迫で圧痕がみられ,圧迫解除後2~3秒で元に戻ることが特徴である(Henryら,1978).一方,リンパ性浮腫や炎症性浮腫のような蛋白濃度が比較的高い液体の貯留時には圧痕は生じにくく,また戻りも遅くなる.蛋白濃度が非常に高くなるムコ蛋白の蓄積や間質の線維化を伴う場合には浮腫は非圧痕性となる.
b)浮腫の分布と局所・全身状態の確認:浮腫がみられた場合には分布が局所性か全身性かを判断する.両側性に浮腫がみられる場合には全身性の浮腫と判断できる.全身性浮腫においても初期には限局していることもあるが,片側性の場合にはまず局所性と判断する.局所性浮腫では皮膚所見が鑑別に重要である.蜂巣炎などの炎症に伴う場合には,発赤,熱感,圧痛などの炎症徴候がみられる.血管炎では同時に多数の紫斑を認めることが多い.リンパ性浮腫や静脈不全が長期化し線維性皮下脂肪織炎を生じた場合には非圧痕性となり,皮膚は厚くなり,つまむことが難しくなる.全身的な浮腫では細胞外液量は3 L以上増加しているため,体重評価が重要である.そして,3大原因(心不全,肝硬変,腎疾患)の浮腫以外の徴候の有無に注目するとともに,肺水腫や腹水の有無の診察も必要となる.右心不全や腎不全に伴う浮腫では頸静脈怒張が坐位でもみられることがある.一方,肝硬変や特発性浮腫では頸静脈怒張はみられない.
4)鑑別のための検査:
全身性浮腫時の検査所見としては,画像検査とともに,肝および腎機能検査,血清アルブミン濃度測定,尿蛋白定量,そして,尿量と尿中Na濃度測定が大切である.尿中Na濃度低下(<20 mEq/L)やナトリウム排泄率(FENa)が低値(<1%)の場合には有効循環血液量の減少をきたす疾患や急性糸球体腎炎を念頭において検索する.[安田 隆]
■文献
Henry JA, Altmann P: Assessment of hypoproteinaemic oedema: a simple physical sign. Br Med J, 1: 890-891, 1978.
Schrier RW: Decreased effective blood volume in edematous disorders: what does this mean? J Am Soc Nephrol, 18: 2028-2031, 2007.
Taylor AE: Capillary fluid filtration. Starling forces and lymph flow. Circ Res, 49: 557-575, 1981.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
浮腫
ふしゅ
リンパ液循環の障害によっておこる病変の一つ。厳密にリンパ液という場合にはリンパ管内を流れているものだけをいうが、リンパ液は実際には血液や組織液と密接な関係にあり、また性状が類似しているので、組織液を含めてリンパ液と理解するのが便利である。動脈側の毛細血管から血管壁を通して組織内に出ていった液は、組織に栄養を与えるものであるため、栄養リンパ液とよばれている。この組織内のリンパ液は、組織および組織内の各種細胞に栄養を与えるとともに、種々の代謝産物を含むようになり、組織リンパ液といわれる。組織リンパ液はまた、静脈側毛細管やリンパ管に絶えず入るために、流出リンパ液ともよばれる。リンパ液が毛細血管壁を透過して出入する機序(メカニズム)に関しては、動静脈性毛細管内の血漿(けっしょう)と組織リンパ液との間の膠質(こうしつ)浸透圧の差と毛細血管内血圧との関係、およびナトリウムやカリウムなどの電解質代謝などが重視されている。このようなリンパ液循環に障害がおこると、組織内にリンパ液、つまり水分が異常に貯留した状態となる。この病変を浮腫、水腫、水症とよび、リンパ管が破れてリンパ液が管外に流出している病変をリンパ漏という。浮腫、水腫はほぼ同意語であり、皮下組織などの組織内にリンパ液が過剰に存在する状態をさすが、水症はどちらかといえば胸腔(きょうくう)・腹腔などの体腔内におこる浮腫、つまり腔水症を意味することが多い。血栓症や肝硬変のときに認められる浮腫のように、静脈やリンパ管の狭窄(きょうさく)・閉塞(へいそく)によっておこる浮腫をうっ滞性浮腫あるいは機械的浮腫とよぶ。肝硬変症では、腹腔の腔水症すなわち腹水症が主要症状の一つである。心不全による全身の循環障害の結果おこる浮腫がうっ滞性浮腫の代表的なもので、身体の下部つまり足部に始まるのが特徴である。炎症の場合にも局所に浮腫がみられるが、これは炎症の主徴候の一つである腫脹(しゅちょう)に関係している。慢性の栄養不足によってアルブミンの摂取不足となり、血漿の膠質浸透圧が低下しておこる浮腫を飢餓(きが)浮腫とよんでいる。癌(がん)の悪液質の場合にも浮腫は認められ、これは一般に栄養性浮腫とよばれる。腎(じん)疾患の際にみられる浮腫は腎性浮腫といい、血管壁障害による透過性の亢進(こうしん)、電解質代謝の異常、血漿タンパクの変調などが関係し、心疾患の場合と異なり、浮腫が顔面、とくに上眼瞼(がんけん)から始まるという特徴がある。
そのほか血管運動神経の麻痺(まひ)や刺激によって生ずる特殊な浮腫もある。顔面、四肢、外陰部および口腔、喉頭(こうとう)、声門などの粘膜に、局所的に、かつ一過性発作的におこる浮腫としてクインケQuincke浮腫がある。また月経周期に関連して、アルドステロンの分泌亢進によって生ずる周期性浮腫があるが、これは内分泌の失調に由来する。皮下組織の浮腫がある程度進行すると指圧によって圧痕(あっこん)を生ずるようになり、脛骨(けいこつ)前面や、足背、足の外くるぶしなどで臨床的に検査するのが常である。
[渡辺 裕]
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浮腫
ふしゅ
edema
俗にむくみという。体の組織間隙に水分のたまった状態。自覚的には,はれぼったい感じがあり,足のすねの上などを指で圧迫すると,へこみができ,しばらくは戻らない。病気というより症状で,結局は,体内で水分の平衡を司る代謝機能の障害で起る。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
浮腫(むくみ)
浮腫とは細胞外にある組織間質液が病的に増加した状態。心臓・腎臓・肝臓の障害、ホルモン異常を始めとする様々な病気などが原因。
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
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普及版 字通
「浮腫」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
ふしゅ【浮腫】
むくみのこと。医学的には、皮膚の下などに体液がたまってしまった状態です。
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の浮腫の言及
【炎症】より
…次いで血管内圧が上昇し,さらに血管壁の物質透過性が亢進し,局所に血液中のタンパク質などがしみ出てくる。このため,局所のはれ,浮腫edemaが生ずる。血管の透過性の亢進には,ヒスタミン,セロトニン,ブラジキニンやプロスタグランジンなどの物質が複雑に関与している。…
【肝不全】より
…非抱合型(間接型)ビリルビンの占める割合も高くなり,脳症を悪化させる一因となる。(2)腹水と浮腫 肝臓は,生体維持に必要な多種類のタンパク質合成を行っている。アルブミンの産生が低下すると,その血液中の濃度も著しく低下し,その結果,血漿の浸透圧が下がるため,血管内の水分は腹腔内や組織間に逸脱しやすくなる。…
【水腫】より
…細胞間組織内または体腔内に異常に大量の組織液が貯留された状態をいう。浮腫や〈むくみ〉という言葉は皮下組織の水腫にのみ限って使用する場合もあるが,水腫とほぼ同様の意味で使われる場合もある。水腫は,血液中の水分が大量に組織内へ移動したとき,血管およびリンパ管内への組織液の灌流が妨げられたとき,組織の水分の吸着力が増加したときにみられる。…
【妊娠】より
…乳房を周縁から乳頭に向かって圧迫すると,初期には水様の透明な,後には灰白色で混濁した粘稠な黄色の小塊を混じた初乳といわれる分泌液が圧出される。(5)全身性変化 (a)皮膚の変化 妊娠による皮膚の変化としては,色素沈着,妊娠線,皮下脂肪の増加,浮腫や静脈の怒張がみられる。 暗褐色から黒褐色の色素の沈着が乳頭,乳輪,外陰部,腹壁正中線,臍窩などに起こる。…
【ネフローゼ】より
…かつては尿細管の病変によってタンパク尿と浮腫を伴う腎臓の疾患を指したが,近年では,糸球体の病変によって生じ,高度のタンパク尿と低タンパク血症を伴う症候群を指し,医学的にはネフローゼ症候群nephrotic syndromeと呼ばれる。1905年,F.vonミュラーが腎臓疾患を炎症性疾患と尿細管の変性疾患に大別し,後者をネフローゼと呼んだ。…
【利尿薬】より
…尿を増量して,体内に余分に蓄積された水分を排出させる薬剤。浮腫([水腫])などに際して用いられる。利尿薬はその作用によって,糸球体濾過を促進させるもの,水利尿を起こすもの,尿細管での再吸収を抑制するもの,の三つに大別される。…
※「浮腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」