牛角文字(読み)うしのつのもじ

精選版 日本国語大辞典 「牛角文字」の意味・読み・例文・類語

うしのつの‐もじ【牛角文字】

〘名〙
① (形が牛の角に似ているところから) 平仮名の「い」の字。
徒然草(1331頃)六二「延政門院いときなくおはしましける時、〈略〉申させ給ける御歌『ふたつもじ牛の角もじすぐなもじ歪(ゆが)みもじとぞ君は覚ゆる』恋しく思ひ参らせ給ふとなり」
② (①から転じて) 恋をいう。〔新語常識辞典(1936)〕
[補注]①に挙げた「徒然草‐六二」の「二つ文字」「直(すぐ)な文字」「歪み文字」は、それぞれ「こ」「し」「く」の字で、歌は「恋しくとぞ君は覚ゆる」の意となる。歌に続く「恋しく」を、光広本ではハ行活用動詞の派生語の表記としては例外的に「こいしく…」としており、「牛の角文字」を「ひ」とする説もあるが、光広本の表記から「い」の字と解釈すべきであろう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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