化学辞典 第2版 「物理架橋」の解説
物理架橋
ブツリカキョウ
physical cross-linking
加硫剤(架橋剤)を用いた化学反応架橋を行わず,高分子鎖自身の凝集力や結晶性などを利用して,物理的に架橋構造を形成させると,室温でゴム弾性を示すエラストマーが得られる.このような方法を物理架橋という.室温よりガラス転移温度が低いソフトセグメントとよばれる高分子鎖(エラストマー的性質を示す)と,室温よりガラス転移温度,融点が高い,結晶性または凝集力の大きいハードセグメントとよばれる高分子鎖をブロック的に連結した高分子(ブロック共重合体)を利用する.ハードセグメントの分子鎖どうしが強い凝集力または結晶化により架橋と同様な役割を果たし,ゴムと同様な性質が得られる.実例として,ソフトセグメントとしてガラス転移温度が-100 ℃ のポリブタジエンと,ハードセグメントとしてガラス転移温度が100 ℃ のポリスチレンからなるスチレン-ブタジエンブロック共重合体は,温度が100 ℃ 以上では流動性を示し,冷却するとゴム状になり,熱可塑性ゴムとよばれている.ゴムのように伸縮性を示す繊維にスパンデックスがあり,この繊維は,ソフトセグメント(ポリテトラメチレングリコール)とハードセグメント(ジフェニルメタンイソシアナート)のブロック共重合体であるセグメントポリウレタンから構築されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報