救急医療用のヘリコプター。遠隔地で病人が発生した場合、救命救急センターに常駐している医療機器や医薬品装備の救急ヘリコプターに医師、看護師が乗り込み、現場近くの運動場などに降りて患者を乗せる。応急処置を始めながら、センターや、より適切な病院に運ぶ仕組みである。救急要請から治療開始までの時間は平均十数分で、救急車に比べて大幅な短縮になり、救命率が上がる。
欧米では1970年代から整備され、たとえばドイツ国内は2012年の時点で約80病院が全土をくまなくカバーしている。日本では、1998年(平成10)の法改正まで消防法により「患者の搬送は救急車」に限られていたため、1995年の阪神・淡路大震災ではほとんどヘリによる負傷者の搬送がなく、世界を驚かせた。ただし、日本でも試みはあり、1981年(昭和56)から岡山県の川崎医大病院、1983年から静岡県の聖隷三方原(せいれいみかたはら)病院などが一時的に運用していた。これらの関係者の強い要望を受けた厚生労働省は、2001年(平成13)4月に川崎医大病院、同10月には聖隷三方原病院と千葉県の日本医大北総総合病院でドクターヘリ事業を開始した。ヘリ会社に委託した運航費用(1機につき年約2億円)は国と都道府県が折半する。
2007年6月、ドクターヘリの全国的配備の目標を掲げ、自治体の協力義務や助成団体を定めた「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(平成19年法律第103号)」が施行された。「NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク」がドクターヘリの必要性を広報して医師・看護師の研修助成事業などを始め、2018年9月の時点で、43道府県・53機となった。
[田辺 功]
「救急医療用ヘリコプタ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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