山川 世界史小辞典 改訂新版 「移民法〔アメリカ〕」の解説
移民法〔アメリカ〕(いみんほう)
移民の受け入れを国是の一つとしてきたアメリカでは,移民法が時代の趨勢を示している。移民の種類としては1875年に売春婦や罪人,82年に精神病者,知的障害者,公共の負担となる者が入国禁止となった。国を対象とする移民法の最初は中国人排斥法(82年)であり,その後10年ごとに2度,更新された。1924年の移民法は,1890年の国勢調査による出生国別外国人人口の2%に相当する数を各国の移民に割り当て,27年以降は年間受け入れ数を15万人としてそれを20年のアメリカ人の「ナショナル・オリジン」に応じて各国に割り当てるもので,19世紀末にふえたいわゆる「新移民」を制限し,西欧中心のアメリカ国民の民族構成を維持する目的であった。これはアメリカの移民政策の大転換であり,その象徴的な意味は大きい。この法は52年に改正され,それまで割当てのなかったアジア諸国に100名の入国許可が下りた。65年の移民法は出身国別割当てを廃止し,移民の流れに重要な変化をもたらし,アジアや中南米からの移民が急増した。非合法移民の入国も増加し,連邦政府は対策として86年および90年に新移民法を出した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報