日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒙古史」の意味・わかりやすい解説
蒙古史
もうこし
モンゴル帝国史についての古典的著書。正式には『チンギス・ハンからティムール・ベイに至るモンゴルの歴史』Histoire des Mongols, depuis Tchinguiz-khan jusqu'à Timour-bey ou Tamerlan, Le Haye全4巻(1834~35)という。著者はスウェーデンの外交官ドーソンA. C. M. D'Ohsson(1780―1855)。彼は元来コンスタンティノープルで生まれたアルメニア系の人。本書はペルシア、アラビア、その他の中近東の根本史料や中国文献を使用して、チンギス・ハンから1360年代までの歴史を平易に叙述したものである。史実が詳しく、記事は正確簡明で、現在でもその価値はきわめて高い。第二次世界大戦前の邦訳本としては、原典の前半部を扱った田中萃一郎訳補『蒙古史』がある。完訳に佐口透訳注の『モンゴル帝国史』全6巻がある。
[佐口 透]
『佐口透訳注『モンゴル帝国史』全六巻(平凡社・東洋文庫)』