アジア(日本を含む)諸地域の人文科学、人文および自然地理関係の書籍・雑誌などを蒐集(しゅうしゅう)公開し(図書部)、それらに関する研究とその成果の公刊、講演会による発表を行っている(研究部)図書館兼研究所。1917年(大正6)8月、岩崎久弥(ひさや)が当時の中華民国大総統顧問(『ロンドン・タイムズ』前北京(ペキン)特派員)モリソンGeorge Ernest Morrisonから購入した中国に関するヨーロッパ文の図書、パンフレット、地図、銅版画など2万4000点をもとに、蒐集の範囲をアジア全域に拡大し、1924年11月、財団法人組織に改め、今日に至る。図書・マイクロフィルムなどの研究資料を毎年増加、1986年(昭和61)現在の総数約70万点。なかでも日本の古刊本、江戸時代の学者・文学者などの自筆本多数を含む岩崎文庫、ロンドン・パリ・北京にある原本を複写した敦煌(とんこう)文書、リスボンのアジューダ宮殿所蔵のイエズス会士書簡集6万ページ余などは、とくに名高い。所在地は東京都文京区本駒込(ほんこまごめ)2-28-21。
[榎 一雄]
『財団法人東洋文庫編・刊『東洋文庫十五年史』(1929)』▽『榎一雄著『東洋文庫の六十年』(1977・財団法人東洋文庫)』
東京都文京区本駒込にある東洋学研究専門の研究所,参考図書館。1917年三菱の岩崎久弥がG.E.モリソンの収集した蔵書を購入したことに始まり,24年財団法人東洋文庫として開設され,以来,日本の東洋学研究の発展に大きな役割を果たしてきた。48年国会図書館支部東洋文庫が設置され,財団所有の蔵書の管理にあたることになったほか,61年にはユネスコ東アジア文化研究センターが付置された(2003年閉鎖)。蔵書は約70万冊で,欧文,漢文および中国語,アジア諸言語(チベット語,満州語,蒙古語,アラビア語,トルコ語,ペルシア語,タイ語など),日本語に大別されるほか,内外の東洋学関係の雑誌のバックナンバーを多く所蔵している。
執筆者:生田 滋
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…エジプト学,アッシリア学,シュメール学,ヒッタイト学,ヘブライ学,セム学,アラビア学,イラン学,トルコ学,イスラム学などがこれに属する。日本のオリエント学研究は第2次大戦前から開始され,東京駒込の東洋文庫には広義のオリエント学文献が収集された。この地域に対する関心の高まりもあって研究者もしだいに増加し,1954年に日本オリエント学会の創立をみた。…
…支部図書館は最高裁判所図書館や国土庁図書館など35館(1996年現在)ある。その他,国会分館,支部上野図書館,支部東洋文庫がおかれている。一方,国立図書館としては,(1)国内出版物の網羅的収集を行う納本図書館の機能をもつ。…
…19年帝国学士院会員に列せられた。24年東洋文庫の開設以来終生その育成に尽力した。明治以後現代にいたるまで東洋史学者の多くは彼の指導を受けた者であった。…
…これらは上層階級向けの閉鎖的なものだったが,医師板坂卜斎の浅草文庫は,庶民に開放されたものとして特筆さるべきである。近代では,南葵(なんき)文庫,蓬左(ほうさ)文庫,松廼舎(まつのや)文庫,静嘉堂文庫,東洋文庫などが著名。図書館文庫本【紀田 順一郎】。…
※「東洋文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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