袋綴(読み)ふくろとじ

精選版 日本国語大辞典 「袋綴」の意味・読み・例文・類語

ふくろ‐とじ ‥とぢ【袋綴】

〘名〙 書物のとじ方の一つ。紙を一枚一枚二つ折りにし、重ねて、折り目でない方に四つまたは五つの穴をあけ、糸でかがってとじたもの。現在、和綴(わとじ)和装本といわれるもののとじ方。
※俳諧・遠近集(1666)一「大黒の袋とちにや帳いはひ〈照盛〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「袋綴」の意味・わかりやすい解説

袋綴 (ふくろとじ)

書物装丁法の一つ。書写面・印刷面,すなわち表面が外側に,裏面〈白〉が内側になるように折り込み,折り目とは反対側の用紙合わせ目に沿って,上下2ヵ所をこよりでとじるもので,形態的には一紙一紙が底ぬけの袋状になるところから袋とじの称がある。したがって粘葉(でつちよう)装とは用紙の折り方,接合部が逆になる。和装本のとじ目は四つ目か五つ目が通例で,四つ目は中国風,五つ目は朝鮮風である。袋とじは中国元代の14世紀初めころからはじまったといわれるが,明代の万暦期(1573-1619)以後に,同様のものを糸とじする装丁法が流行した。中国では線装,日本では唐(から)とじとも呼び,室町時代後期から江戸時代にわたって和装本装丁の主流となった。東洋の印刷方式は,版木に用紙をのせてその裏面をこすって印刷するため片面刷りしかできなかったので,線装は粘葉装の欠を補う画期的な装丁法であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「袋綴」の意味・わかりやすい解説

袋綴
ふくろとじ

室町時代から江戸時代を通じてもっとも普及した装丁法。料紙を中央から二つに折り、それを数枚ないし数十枚重ねて、折り目とは反対側の箇所、すなわち右側を上下二か所紙縒(こより)で下綴(したと)じし、前と後ろに表紙を添えて糸で綴じる方法である。右側の綴じ目から見て袋状になっているところからこのように称される。綴じ目が四つのものを「四(よ)つ目綴(めとじ)」、五つのものを「五つ目綴」という。中国では「四針眼訂法(ししんがんていほう)」「五針眼訂法」というが、「四つ目綴」は和本や唐本(とうほん)に多く、「五つ目綴」は朝鮮本に多い。袋綴は、古く「唐閉(からとじ)(綴)」(『貞徳文集(ていとくぶんしゅう)』上)とも称されているように、中国から影響を受けたもので、中国では明(みん)・清(しん)時代に盛んに行われた。

[金子和正]

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世界大百科事典(旧版)内の袋綴の言及

【製本】より

…しかし,粘葉装は繙読のさい空白面と文字面が交互にあらわれ,また紙葉ごとに糊を入れるので,虫害にかかりやすいため,糊ではり合わせる代りに糸でとじる方法が案出された。中国ではこれを〈綫縫(せんぼう)〉といい,日本では〈袋綴(ふくろとじ)〉といって,普通の和装本に使用されているものである。 以上のように,中国では粘葉装(胡蝶装)から袋綴(綫縫)に移行したが,日本ではその間に,〈大和綴(やまととじ)〉(〈綴葉装(てつちようそう)〉ともいう)という,独特の装丁法を案出した。…

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