日本では古くは,褾紙,裱紙とも書き,書皮(しよひ)ともいった。本の外側の部分で,内部を保護し,また形を保つためにある。古代オリエントのパピルス本は,巻子本(かんすぼん)に仕立てて表紙はつけず,皮などで作った筒に数本ずつ納めて保存した。西洋では,4~5世紀に皮紙(ひし)を用いた冊子本(さつすぼん)が主流となるにつれ,表紙がつけられるようになる。中世には木の板を金で覆って,宝石や金銀細工などでけんらんたる装飾を施した重厚な表紙が作られるようになり,中身は散逸しても表紙板だけはしばしば伝存している。
日本や中国の巻子本には表紙があり,本文の前に余白を多くとったり,ふつうは別の厚い白紙や,色紙(いろがみ),金銀箔をおいた紙などを用いたり,布帛をはりつけたりする。表紙の裏,すなわち内側の部分を見返しという。
冊子本には前表紙と後表紙(裏表紙)があり,また背の部分は背表紙という。現代の上製本ではそれぞれの表紙の大きさの板紙を,紙や布,まれに皮などでひと続きにくるんである。仮製本や雑誌では,厚手の1枚の紙だけを用いて前後の表紙とする〈くるみ表紙〉が多い。またほとんどの場合表紙にはその本の題名が示されるが,これを表題,または外題(げだい)といい,これを小紙片に印刷・手書きして表紙にはりつけることもあるが,この小紙片を題簽(だいせん)という。
→製本 →本
執筆者:上田 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…紙葉を順序正しくまとめて本の形にすることであるが,具体的には紙葉をページ順に折りたたんで折丁とし,これを順序よくそろえて(丁合(ちようあい))とじ,表紙をつけ,その平(ひら)や背などに装飾をおこなうことをいう。製本は和装本(和綴(わとじ))と洋装本(洋綴)に大別されるが,現在ではほとんど後者だけで,一般に〈製本〉といえば洋装本を意味するほどである(図1)。…
※「表紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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