解離試験(読み)かいりしけん(その他表記)elusion test

改訂新版 世界大百科事典 「解離試験」の意味・わかりやすい解説

解離試験 (かいりしけん)
elusion test

解離は化学用語としても使われるが,免疫学でも主として抗原分子と抗体分子とが特異的に結合してできた複合物から物理的あるいは化学的な作用で抗体が離れる意味に用いられる。抗体の解離現象を利用して抗原や抗体の検査をすることを抗体の吸収-解離試験あるいは単に解離試験または溶出試験という。この試験法の利用範囲は広いが,鋭敏度が高いうえ操作も比較的簡単なところから,通常のABO式血液型検査法ではO型とまちがえられるほど反応の弱いA型やB型の人の血液の検査や,血痕・毛髪・爪・歯などからのABO式血液型判定によく利用される。検体(血痕など)に血液型判定用の試薬(抗A,抗B,抗H)を加えて反応させ,抗体がその活性を失うことなく抗原から解離してくるような条件を与え,どの抗体が解離されてきたかをみて,その検体の血液型を間接的に判定する。1回の検査に要する検体量は,たとえば太い毛髪では5cmほどである。
血液型
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の解離試験の言及

【血痕反応】より

…性別は,Y染色体上のアメロゲニン,DYZ1,SRYローカスなどを指標とするDNA分析によって判定できる。ABO血液型の検査は,抗体の吸収‐解離試験などの免疫学的方法やDNA解析によって行われる。DNA多型(DNA型)には多くの種類(システム)があるが,日本では,血痕の個人識別には,警察庁が開発したMCT118(D1S80)型(16塩基を1単位とするシングルローカス高変異縦列反復配列(VNTR)多型の一種で,PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)増幅‐電気泳動法で検査する)が標準的なDNA多型システムとして広く用いられ,これにHLADQα型を併用する方法が実務化されている。…

※「解離試験」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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