改訂新版 世界大百科事典 「解離試験」の意味・わかりやすい解説
解離試験 (かいりしけん)
elusion test
解離は化学用語としても使われるが,免疫学でも主として抗原分子と抗体分子とが特異的に結合してできた複合物から物理的あるいは化学的な作用で抗体が離れる意味に用いられる。抗体の解離現象を利用して抗原や抗体の検査をすることを抗体の吸収-解離試験あるいは単に解離試験または溶出試験という。この試験法の利用範囲は広いが,鋭敏度が高いうえ操作も比較的簡単なところから,通常のABO式血液型検査法ではO型とまちがえられるほど反応の弱いA型やB型の人の血液の検査や,血痕・毛髪・爪・歯などからのABO式血液型判定によく利用される。検体(血痕など)に血液型判定用の試薬(抗A,抗B,抗H)を加えて反応させ,抗体がその活性を失うことなく抗原から解離してくるような条件を与え,どの抗体が解離されてきたかをみて,その検体の血液型を間接的に判定する。1回の検査に要する検体量は,たとえば太い毛髪では5cmほどである。
→血液型
執筆者:中嶋 八良
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