抗原(読み)コウゲン(英語表記)antigen

デジタル大辞泉 「抗原」の意味・読み・例文・類語

こう‐げん〔カウ‐〕【抗原】

体内に入ると抗体をつくらせる原因となる物質。一度抗体ができると、次に侵入した同じ原因物質と特異的に反応する。異種たんぱく質多糖類毒素微生物などが抗原となりうる。
[類語]抗体

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百科事典マイペディア 「抗原」の意味・わかりやすい解説

抗原【こうげん】

動物体内に侵入し刺激することにより,特異的に反応するタンパク質すなわち抗体産生させたり,細胞免疫を発動させる物質。毒素,微生物,細胞,合成化合物などが抗原となるが,抗原上の抗体と作用する部分抗原決定基という。なお動物体内で抗体産生を起こさないが,試験管内では抗体と反応する物質を不完全抗原あるいはハプテンという。→抗原抗体反応
→関連項目アレルギーアレルゲンオーストラリア抗原感作クローン蛍光抗体法血液型抗毒素ジフテリア血清スネルスーパー抗原組織適合抗原ツベルクリン反応DNAワクチントキソイドプロテウス菌ペニシリン溶血性連鎖球菌ワクチンワッセルマン反応

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化学辞典 第2版 「抗原」の解説

抗原
コウゲン
antigen

動物体内において抗体を産生させて,その抗体と特異的に反応する物質.異種のタンパク質,多糖核酸核タンパク質リポタンパク質,および合成高分子が抗原となる.たとえば,ウシ血清アルブミンをウサギに非経口的に投与すれば,ウサギ血清中にウシ血清アルブミンに対する抗体が産生される.ウサギ血清アルブミンをウサギに投与しても抗体は産生されない.このように,抗原となる物質は免疫される動物の抗体産生細胞によって“異種”と認識される物質である.一般に,抗原は細菌血球などの粒子,あるいはタンパク質などの複雑な高分子である.[別用語参照]ハプテン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抗原」の意味・わかりやすい解説

抗原
こうげん
antigen

生物体には,「非自己的」 (ノンセルフ) な物質を投与されたとき,それに対応する抗体や,感作リンパ球をつくりだす性質がある。こうした反応を引起す物質を抗原という。また,この抗原は,抗体と特異的に結合し,さらに補体と結合し,免疫複合体をつくるなどの反応を起すほか,感作リンパ球と特異的に結合し,細胞性免疫反応を起す作用もある。抗体をつくりだす免疫原性と,その抗体と特異的に反応する反応原性の両方の性質をもっている抗原を完全抗原,反応原性だけをもつものを不完全抗原 (ハプテン) という。不完全抗原よりも抗原性を欠き,単独では抗体を産生しないし,抗原抗体反応を呈さないが,抗体との親和性をもち,完全抗原とその抗体との間の特異的反応を抑制する物質をセミハプテンと呼ぶ。人工抗原,非特異性抗原,フォルスマン Forssman抗原などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「抗原」の意味・わかりやすい解説

抗原
こうげん
antigen

生体に免疫応答を惹起(じゃっき)し(免疫原性)、その結果生じた特異的抗体または特異的リンパ球と反応しうる性質(反応原性)をもったものをいう。免疫原性をもつためには、通常異種で、分子量がある程度以上大である必要があり、タンパク質や多糖体は免疫原性が強い。小分子量(通常1000以下)のものは反応原性はあるが、高分子物質と結合しないと免疫原性はなく、ハプテンhaptenとよばれる。

 免疫原となりうる基本構造を抗原決定基といい、多くの抗原は数多くの異なる抗原決定基をもつ複合体で、ハプテンはそれ自体抗原決定基となりうる。

[高橋昭三]

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世界大百科事典 第2版 「抗原」の意味・わかりやすい解説

こうげん【抗原 antigen】

1903年,ドイッチュL.Deutschが抗体をつくるきっかけとなり,それと反応するものという意味の語Antisomatogenを縮めてつくった語で,血清学,免疫学の分野を中心に多く使われている。抗原は次の2条件から定義される。条件(1) 脊椎動物の体内に入って,それだけに反応性をもつ(これを特異性という)抗体や感作リンパ球をつくって,その個体に免疫を成立させるが,条件によってはそれに特異的な不反応性(免疫学的寛容)状態を成立させる能力,またはその潜在能力をもつ物質。

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栄養・生化学辞典 「抗原」の解説

抗原

 免疫原ともいう.体内で抗体の産生をもたらす物質.タンパク質,ペプチドが多いが多糖なども抗原となる.

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世界大百科事典内の抗原の言及

【抗原認識】より

抗原が生体に侵入すると,免疫系の中心をなす種々のリンパ球が刺激されて増殖し,種々の機能を現すようになり,免疫が成立する。抗原刺激に対するこのような免疫応答は,その抗原に特異的であり,ひとつひとつの抗原に対しては,それぞれきわめて限定された少数のリンパ球のみが反応する。…

【抗体】より

…生体にウイルス,細菌,その他の細胞や動植物の成分などの抗原が侵入すると,生体の免疫系が刺激され,やがてそれらの侵入物に特異的に結合できるタンパク質が合成されて,細胞表面,血清その他の体液中に出現する。このタンパク質が抗体である。…

【ハプテン】より

…K.ラントシュタイナーが1921年に人工抗原の研究に際して提唱した概念上の抗原決定基。ラントシュタイナーの定義によれば,独立では抗原性をもたないが,他のタンパク質(担体)と結合させて投与すれば,特異的な抗体をつくらせ,その抗体と結合する能力を有する低分子物質をさす。…

【免疫】より

…この物質はやがて,タンパク質であり,試験管内でさまざまな反応を起こし,生体内では感染防御に働く分子であることが明らかになり,のちに〈抗体〉と呼ばれるようになった。これに対し,この抗体産生を誘導する微生物由来の異物,さらには広く〈自己でないもの〉を〈抗原〉と呼ぶのである。抗原と抗体の試験管内および生体内での反応を〈抗原抗体反応〉と呼ぶが,これは免疫反応の重要な要素である。…

※「抗原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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