翻訳|dissociation
分子がより小さな、あるいはより簡単な分子や、原子団、イオンまたは原子に分解するとき、あるいは結晶が気体分子を放出したり、溶液になってイオンに分解するときなど、元の分子や結晶と分解生成物との間に平衡関係が成立するか、可逆的であるようなとき、これらの分解を解離という。とくにイオンに解離するときは電気解離、略して電離といい、熱による場合を熱解離などという。
たとえば、ヨウ化水素を一定濃度に保つと次のような解離平衡が成り立つ。
2HIH2+I2
このときヨウ化水素aモルが反応してxモルが解離したとすると、このときの平衡定数Kは、
K=x2/4(a-x)2
であり、このKを解離定数といい、xを解離度といっている。
炭酸カルシウムの熱解離では次のようになる。
CaCO3CaO+CO2
このとき、炭酸カルシウムと酸化カルシウムは固相であるが、放出される二酸化炭素は気体であり、気体の圧力は反応温度によって一定の値をとる。この圧力を解離圧という。このときの解離圧は低温では低いが、897℃で1気圧となる。塩化ナトリウムを水に溶かすとNa+とCl-とに電離する。しかし結晶そのものもNa+とCl-とから成り立っているので、状態が変わっただけとみることもできる。このような強電解質では電離は完全であるが、弱電解質たとえば酢酸やアンモニアなどでは電離は完全ではなく、電離平衡が成立する。このようなときの解離定数は、酸解離定数、塩基解離定数などとよばれる。
[中原勝儼]
『木村優・中島理一郎著『分析化学の基礎』(1996・裳華房)』▽『加藤忠蔵・菅原義之著『分析化学――理論と機器分析』(2000・昭晃堂)』
可逆的な分解反応により分子がいくつかの部分に分かれることをいう。一般に安定な分子の解離には外部から熱や光などエネルギーを供給することが必要で,それぞれ熱解離,光解離などと呼ばれる。解離に必要なエネルギーを解離熱あるいは解離エネルギーといい,たとえば,二原子分子の塩素Cl2,水素H2,酸素O2,窒素N2の解離熱はそれぞれ243,436,495,942kJ/molで,解離熱が小さいものほど解離しやすい。これらの値は,二原子分子をつくる化学結合の強さを表し,結合エネルギーとも呼ばれる。固体物質の熱解離により気体物質をつくる場合,たとえば炭酸カルシウムの解離反応
CaCO3(s)⇄CaO(s)+CO2(g)
で,二酸化炭素CO2の平衡分圧は温度のみによる定数となり,これを炭酸カルシウムの解離圧という(かっこ内のsは固相,gは気相を表す)。その値は25℃で1.5×10⁻23気圧で,温度が高くなるとともに大きくなり,897℃で1気圧になる。
電解質がイオンに解離する場合をとくにイオン解離または電離という。気相では電離は起こりにくく,水のような誘電率の大きい極性溶媒中でとくに起こりやすい。これは,イオンが水和によって安定化するためである。解離反応に対する平衡定数を解離定数といい,電離の場合にはとくに電離定数という。たとえば酢酸の電離は
CH3COOH⇄CH3COO⁻+H⁺
で表され,その電離定数は
で与えられる。[ ]は平衡濃度を表す。電離定数が大きいほど電離の程度は大きく,たとえば酸の電離定数が大きいほど酸として強い。解離平衡において,解離した割合を解離度といい,電離平衡の場合にはとくに電離度という。解離度は直接測定によって求められ,これから解離定数が求められる。強電解質の電離度は1で,ほとんど完全に電離している。
執筆者:妹尾 学
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一つの分子が二つ以上の断片(安定分子,遊離基,イオンなど)に可逆的に分かれること.ただし,光化学反応でしばしば見られるように,光の吸収で生じた遊離基が二次的反応を起こして不可逆的になる場合も,最初の段階はやはり解離(光解離)という.溶液中における電解質の解離は電離ともいう.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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