針ヶ谷夕雲(読み)はりがやせきうん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「針ヶ谷夕雲」の意味・わかりやすい解説

針ヶ谷夕雲
はりがやせきうん
(?―1663)

江戸初期の剣術家。無住心剣(むじゅうしんけん)術(夕雲(せきうん)流、破想(はそう)流)の創始者。その伝は明らかではないが、俗名五郎右衛門、上州(群馬県)の出身と伝え、高弟小出切一雲(おでぎりいちうん)の著『剣法夕雲先生相伝(そうでん)』などによれば、弱冠より剣術諸流を学び、壮年に及んで小笠原玄信斎(おがさわらげんしんさい)の門に入って真新陰(しんのしんかげ)流を学び、ついにその秘伝を受け、同門屈指の名手となり、江戸・八丁堀道場をもち、紀州侯から内証扶持(ないしょうぶち)を得ていた。もともと無学の人であったが、東福寺の虎白和尚(こはくおしょう)に参禅して、初めて師玄信斎の秘伝とする八寸の延金(のべかね)も、つまりは虚構にすぎず、畜生心(ちくしょうしん)を離れ所作を捨て、自性本然(じしょうほんねん)の受用のうちから勝理を自得すべしとした。ときに夕雲六十余歳、虎白はこれを評して無住心剣術と名づけたという。

[渡邉一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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